+

認知症を理解する   〜字幕入りDVD製作にあたって〜
認知症キャラバンメイト 柳岡克子
 毎年4月に行われる御坊市身体障害者福祉協会の総会の後、せっかく会員が集まるのだから御坊市のおはなし出前講座など研修になる講座などを企画しています。今まで、交通安全教室だったり、火災報知機の説明、栄養教室、防災教室、リフレッシュ体操、地デジについて、オレオレ詐欺に引っ掛からないための講習会などをしました。
 今年は、御坊市地域包括支援センターの協力で「認知症サポーター養成講座」を開くことにしました。私も、キャラバンメイトとしてあちこちで養成講座をさせていただいていますが、自分が会長の会で講師をするのは照れくさいので、ケアマネジャーの友人でベテランのキャラバンメイトにお願いしました。内容は申し分なく良かったのですが、終わった後、会員の聴覚障害者からご意見をいただきました。「せっかくのDVDに字幕がついてなくて話の内容について行くのが大変でした。」というものでした。私は、手話通訳を頼んでいたので大丈夫と勝手に思い込んでいたのです。ところが、パワーポイントやDVDを流す時には部屋を暗くします。そうすると手話の手が見えにくくなくなるのです。なるほどと思っている場合ではありません。聴覚障害者には手話さえあればと思っていた私は「ガーン」と頭を叩かれたような気持ちになりました。暗くなるとどうなるかわかっていなかった自分が恥ずかしくなりました。今回は申し訳なかったけれどこのままでは、聴覚障害者の学習の機会が失われると思いました。
 「何とかしなければ」と思い、このDVDの著作権者の小野薬品工業株式会社に相談しました。この製薬会社は認知症の薬を販売していて、薬剤師会の勉強会で認知症に熱心に取り組んでいることを知っていましたのでお願いしましたところ、字幕について前向きに検討していただけることになりました。2カ月ぐらいした頃、広報室の谷幸雄様から連絡をいただき、DVDの製作会社に依頼して、字幕を入れてくれたとのことでした。私は、さっそく送っていただいたDVDを御坊市包括支援センターに寄贈し、多くの聴覚障害者に認知症について理解を深めてほしいと思いました。ドラマ「バアちゃんの世界」は2部構成で計15分です。配役は大鶴義丹、裕木奈江、綾戸智恵などで、認知症になったら起きるであろうエピソードをわかりやすく演じています。そして、その対応の仕方も家族のあたたかい見守りによって救われていくような内容です。インターネットからご覧いただけます。
 講座では、認知症についての説明が行われます。誰にも起こりうる脳の病気です。脳の細胞が壊れることによって直接起こる記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害、実行機能障害などの症状と、本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って起こる精神症状や行動上の問題について具体的に学びます。そして認知症の治療や予防について専門家とのコミュニケーションや信頼関係の大切さを学びます。最後に認知症の人と接するときの心がまえや介護している家族の気持ちを理解し地域や職場など認知症サポーターとしてできることをさまざまなケースを参考に学び「認知症サポーター」となるのです。
 認知症サポーターは、認知症を正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守る応援者です。自分のできる範囲で、友人や家族にその知識を伝えたり、認知症になった人や家族の気持ちを理解するよう努めたり、隣人あるいは商店・交通機関等、まちで働く人として手助けをする人たちです。
 御坊市は、25,474人の人口で高齢者は6,862人。高齢化率は26.94%で全国平均より高くなっています。現在までに認知症サポーター養成講座を受けた認知症サポーターは、1,722人(72講座)となっています。受講団体が重なって何度も受けてくれた方もいらっしゃいますが、まだの方はぜひ受講して下さい。受講者にはオレンジリングが送られます。60〜90分の講座で無料です。5人以上のグループならキャラバンメイトが講座に行きますので地域包括支援センターまでご連絡ください。
 この度、手話サークルひまわりで「やっぱり、笑顔のサブちゃんがいい」という字幕入りのアニメのDVDを使って認知症サポーター養成講座が開かれました。聴覚障害者をはじめとする31人の会員さんが「わかりやすかった。」との感想を言ってくれました。今後、研修関係のDVDなどには、字幕入りを作成していただけるようお願いしていきたいと思います。