NPO協働モデル事業をふりかえって
                       和歌山県NPO協働モデル事業選定委員 柳岡 克子

 平成18年度和歌山県が実施した「わかやまNPO協働モデル事業」の選定委員をさせてもらいました。1年間をふりかえる前に和歌山県のNPO協働推進課の取り組みからたどってみようと思います。
 平成16年9月和歌山県では当時の中山次郎副知事を会長とする和歌山県NPO推進庁内連絡協議会が「NPOとの協働推進ガイドライン〜行政職員のためのNPOとの協働推進の手引き〜」を策定しました。(平成18年3月小佐田昌計前副知事会長時に改訂)それによると、「限られた予算の中、これからの県政においては、県民の自発的な公共活動を行っているNPOとの協働が不可欠で県全体の共通認識をガイドラインで図ったうえで行政職員にNPOとの協働を推進していってもらいたい。」というのが策定の趣旨です。まず、NPOについての基本的な理解と協働について述べられ効果的な協働を推進するための手順が示されています。
 平成16年4月に、和歌山県における行政機関、NPO及び営利団体が相互の理解を深め、連携することにより、県民に対してより効率的、効果的な公共サービスを提供するためのパートナーシップが構築できるよう、行政機関、NPO及び営利団体間の定期的な協議の場として「行政とNPO等のパートナーシップ協議会(和歌山大学経済学部ビジネスマネジメント学科教授の岩田誠会長)」が設置されました。平成17年3月には提言がまとめられました。
 まず、行政への提言として@ガイドラインの周知徹底A人材交流BNPO活動基金の創設C立ち上げ支援D地域にあったNPOとの協働やNPOへの支援制度の研究の5つ。
NPOに対しては@委託や助成に頼らない自主財源づくりA情報公開のガイドラインの創設Bシンクタンク機能の充実C社会的責任の発揮とマネジメントの強化の4つ。
 行政とNPO双方への提言として@広報媒体によるNPOの周知A行政、NPO、市民によるタウンミーティング等の定期開催B協働事業評価の実施と情報開示C人材育成をあげ県民参加による活力あふれるふるさと和歌山づくりの契機となることを期待しています。
 NPO協働推進課では平成17年度と18年度に県から提示する課題テーマを解決するための企画提案を募集しました。応募のあった16団体の中から書類審査と担当課との協議をクリアし、プレゼンテーションを審査し8つの団体を選定しました。選定にあたっては、先進性・先駆性等アイデアの視点が新しいか、県のニーズにあっているかどうかの企画力。事業への熱意があり事業を遂行できる組織体制があり、事業の場所・時期・方法が妥当で予算の見積が適正であるかどうかの実行力。県が行う施策としてふさわしく、緊急性が高く、不特定多数の利益につながるかどうかの公益性。コスト意識を持ち、行政が実施するより少ない予算で大きな効果があるかどうかの費用対効果。今後様々な活動に発展する可能性があり、成果が広く県民に還元されるかどうかの効果波及性。の5つの視点からポイントをつけて評価しました。
 選定後は各団体が事業を行い、堀内秀雄和歌山大学生涯学習教育センター教授を委員長に6名の選定委員が、採択された8件の事業を現地状況調査し、成果や問題点を評価しました。3月24日「協働をふりかえる会」としてNPOと担当課による成果報告がありました。私は、御坊市の御坊アジア友の会(古山隆生代表)の現地状況調査に行きました。県(文化国際課)が提案したテーマにそった「外国人のための防災マニュアル」の冊子ですが、解説が5ヶ国語に翻訳され個別に配布するなど行政では難しいことでもNPOだからこそできたのだと協働のすばらしさを感じました。
 その他の事業は、介護予防の体操2件、子どもにモノづくりを体験してもらう発明教室、アマモ場造成による環境保全、シーニックバイウエイプロジェクトと一緒に地域通貨「ちゃら」を使った清掃活動、リサイクル材使用による道路景観事業、万葉妹背山についての冊子製作と歴史探求の8件。どれも優劣をつけがたい活動で県(担当課)との協働もうまくいって採択から実施まで短い期間だったにもかかわらず充実した成果が報告されました。
最後に、選定委員を交えての意見交換会が開かれました。委員は事業の継続や協働の広がりを課題としてあげ、堀内委員長は「行政職員もNPO活動への参加率をあげるべきです。行政とNPO、企業、大学が地域に根ざした活動を進める中で協働とは何かを考えるいいモデルとなり、それぞれが力を付けました。今後は県レベルから市町村レベルに移行していく段階に入ってきています。」と総括しました。
 私はNPOが行政と協働していく過程の中で、和歌山の自然、文化、歴史などを考慮し、和歌山らしさが十分発揮される提案が望ましいと思います。それにはNPO自体も補助金めあてだったり、単なるアイデアの提供やアウトソーシング的な発想ではなく、積極的な姿勢で企画提案することが大切です。そこに大きな意義をみいだし、「自分たちがその活動が好きだから夢中になれる。」というスタンスが長続きの秘訣かなと思います。その活動に市民も一緒にいきいき参加することが相乗効果となって、大きなエネルギーを生み出すのではないでしょうか。それがひいてはまちおこしで地域の活性化につながるのです。NPOは目的を持って個性を発揮し、地域に密着した和歌山らしさをアピールできれば、社会的貢献度は高くなります。県下いくつものNPOの企画・提案・活動を拝見させてもらい、すばらしい団体がいっぱいあることがわかりました。現在和歌山県の認証を受けているNPO法人は252団体あります。それに近いがまだ認証していないグループもたくさんあり今後の活動に期待しています。