「天の銀行」
 日高番傘川柳会では「ここちよしこ」こと柳岡克子(やなおかよしこ)です。克子という漢字をなかなか「よしこ」を読んでくれる人が少なく、小さい頃からの友達は「ヨッコ」と呼んでくれますが新聞などで私を知ってくれた方はほとんど「かつこ」と思っていらっしゃいます。「よく新聞見てくれているなぁ」と感謝こそすれ、別に弊害がないので最近は否定も訂正もしません。
「克」という字は「教育ニ關スル勅語」の中に出てきます。現在は教育基本法の世の中なので、「教育勅語」を熟読したことのある方は少ないかもしれません。私も教育基本法に基づいて教育を受けてきた世代なので内容など知るよしもなく、しかも戦前の教育はまちがった軍国主義なのでよくないものだと思い込んできました。文語調のリズム感は音読するにはとてもいい流れで、ご高齢の方なら空で全部言えます。「朕惟フニ我カ皇祖皇宗・・・・」とつづく文を小さい頃から暗誦してきたのですね。私にはせっかくのリズム感も意味がつかめず結局口語文訳を読むことになったのですが、これがまたいい内容なのです。少年犯罪が多発・凶悪化し、世の中が拝金主義となってしまった現在社会にもう一度見直すものがあるとしたらこの教育勅語にある精神ではないかと思いました。文部省発行の「尋常小学校修身」の教科書に掲載されているのです。この勅語のどこがいけないのか?戦後60年を過ぎここに来て戦後教育の弊害ともいえる事件や出来事が日本国中あちこちで起こっているのです。科学的に原因を究明する偉いさんは多いけど、もし日本人が日本に生まれたことに誇りを持ち教育勅語にある精神を皆が持ち続けていたらこうまで殺伐とした世の中になってはいなかったのではないかという検証をする人は少ないと思います。一度捨てたものを拾うのはよくないとでも思っているのか、時代遅れで流行らない考え方だと思っているのでしょうか?
 私は、10年ぐらい前から全国各地を講演活動させてもらっています。地元でもさせてもらい新聞にも掲載していただきましたが、紙面には字数という制限があり一時間半の講演でも一分で読める記事になってしまいます。90分の前半は私の生い立ちから卓球をはじめたところまでです。ビデオ上映をはさんで、後半が私の一番伝えたい部分なのですが、その頃にはほとんどマスコミの方は帰られます。先日、加古川市の老人大学OBの研修会で500人の高齢者の前でお話させていただきました。母も付いていってくれたのですが、帰りがけに皆握手を求めてくれ涙を流して感動してくれました。何がよかったのか私も知りたくて大人の会ではあまり取らないアンケートといった感想文を書いてもらいました。
 その中で、一番大勢の方がよかったと書いてくださった内容が天の銀行に関するものでした。人の知らないところで働き、目に見える銀行に貯金されないお給料は「天の銀行」に貯金されるという話です。仏教では徳を積むと言うそうです。拝金主義の社会では損だと思われがちの地道な仕事やお金にならない活動でもきっと神様、仏様が見ていてくださると思えば無駄ではないのです。いつか喜びとなって巡ってくると私は信じていると言わせていただきました。そのような精神の人が増えれば幸せな人が増え、平和な世の中になるとも。では具体的に徳を積むとはどのようなことを言うのか考えてみました。人に親切にする。困っている人を進んで助ける。いつも笑顔でやさしい言葉を使う。仕事や勉強につとめ励む。自分がして欲しいことを人にする。人が嫌がることはしない。先生や年上の人を尊ぶ。まわりの人と仲良くする。人の良い所を見つけて悪口を言わない。お世話になったら何倍もお返ししようと努める。時間や約束を守り、うそを言わない。無駄遣いをしないで始末にし、すべてのものや人を大切にする。家族は仲良く助け合う。まあ、こんなところかなと思いますが、改めて私が加古川まで行って言わなくてもと思いますが今の世の中この精神が失われつつあるのだそうです。だからこそ感想文によりますと「思い出させてくれてありがとう。」となるのです。実際私もどこかで習ったことはあるがいつだったかどこでだったか思い出せないが大切なこと。あたりまえだと思って忘れていたこと。なのです。ところがこれが教育勅語の口語文訳と一致するところが多いのです。阪神の星野氏が逮捕前の村上容疑者に「天罰が下る」と言及したことはテレビで有名な話ですが、学校では「悪いことをしたらバチが当たる。」とは教えられないのです。宗教教育もダメで、神様も仏様も学問として習うのです。にもかかわらず、結婚式はチャペルやお宮で、死んだらお寺で葬式をする日本人の心の教育を教育機関が指導できない戦後教育のひずみを今しっかり見直そうというのが道徳教育の教科化につながると思います。
 500人もの大勢の加古川の80代のお年寄りたちは皆元気でいきいきして月1回の研修を楽しみにしているとのことでした。元気でない人は来ていないけど・・・。人口比率10分の一の御坊と比べても意味がありませんが、おしゃれで若々しく「元気をもらったので長生きして老後のために勉強するのですよ。」と帰っていかれました。