30、サンドイッチ方式
 中学3年の塾をしていると受験のプレッシャーからか思春期だからか女の子でも規則を破りたくなる子が出てくる。ある日、化粧をして塾に来た女の子が来た。化粧は学校で禁止されている。いきなり「化粧はあかんやろ」と言ったら、学校の先生とか親と一緒になる。私は、「○○ちゃん、きれいやね!自分でしたん?」と見た目で感じたことを正直に伝えた。
 うれしかったのか「上手やろ、先生もしたろか?」「メイクの学校でも行くか?勉強せな受からんで!」とまあ少し落ち着くのを待って「でもまだ中学生やろ、学校で化粧禁止になってるんと違う?」ここで一番言いたいことを言うた。「あかんけど、友達皆してるで〜」「あかんのわかっててするってどうよ?」「まあね」ちょっと反省しかかったところで、「もうそんなんやめなさい。先生に悪い子やと目付けられるだけ損やで」と叱った。「先生に悪い子やと目付けられるだけ損」という所が生徒の立場に立った「叱る」ということだ。でもこのまま帰れば「やっぱり塾でも怒られた」という印象だけ心に残る。そこで「○○ちゃんは、化粧なんかせんでもきれいやで!素肌が素敵やから」と。これを聞いて嫌な気持ちはしない。女の子はきれいと言われてうれしくても化粧で化けるより素肌がきれいだと言われる方がうれしい。あくる日から、化粧してこなくなった。私は、続くかどうか心配だったが、「化粧ない方がほんまにきれいや」と数日言い続けたらもうして来なくなった。私は、一番叱りたいことを真ん中にはさんで、まずほめて、そして叱って、最後にほめるようにしている。中においしいハムを包み込むみたいに、私は、サンドイッチ方式と呼んでいる。また、叱ると怒るは違う。怒るというのは感情に任せて怒る。叱るというのは愛情を込めている。心を込めて良くなって欲しいというのが伝われば、次からは良くない事だと理解できればしなくなる。この子がかわいいというのが伝われば子どもの心は動く。親はつい感情で怒ってしまう。世間体を気にしたり、親目線で見てしまいがちだ。人前で見せしめみたいな怒り方はもっとよくない。怒られた方は、深く傷つきかえって逆効果だ。私は子どもの立場に立って客観的に間に入って親と話をする。