18、神戸での生活
  下宿も、膝が曲がらないので、足を伸ばしたまま入れるお風呂のあるところを探した。そして、親切な大家さんが近くにいる寮が見つかり、神戸での生活が始まった。
 大学で家族と離れて生活するとなるともう一つ困ることがあった。それは、腰が曲がらないので落としたものを拾えないことだ。まだインターネットなどない時代にいろんな人に聞き合わせて、父はマジックハンドを買ってきてくれた。これがあると何でもつかめる。
 まず、マジックハンドでソックスをはく練習をし、料理も洗濯も身の周りのことは何でも一人でできるようにした。一人で生活してみて初めて家族のありがたみがわかった。自炊だったので買い物等大変だったけれど、街では見知らぬ人に荷物を持ってもらったり、階段で手を貸してもらったり親切にあったことも今ではいい思い出となっている。大学の方も私が入学したことにとても協力的で、階段には手すりをつけてくれ、教室の近くまで車の乗り入れを特別に許可してくれた。薬学部の授業は実習もあり、普通の学生でも大変なのに、四年間で卒業できたのも周りの友達のおかげだと思っている。