命の尊厳を考える  
薬剤師 柳岡克子
 病院薬剤師が主役を務めるドラマがフジテレビで始まりました。葵みどり役の石原さとみ主演の医療ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』です。CMのスポンサーがドラッグストアだったり、薬剤師会の会報の封筒にドラマのポスターが入っているなど薬剤師会としても力の入れようです。新型コロナ感染症のため撮影ができず、スタートが遅れましたが、7月16日木曜日夜10時から放送開始しました。
病院薬剤師の仕事を知らない人に知ってもらうためにとてもいい番組だと思いました。世間の多くの方は、処方箋を見ながら薬を袋に入れる人というイメージなのではないでしょうか。パソコンもなくアナログの時代でシステムが全く違いますが、私は大学時代ひだか病院で実習させていただきました。今では、外来は院外処方で、院内の薬については、病棟へ上がり患者に向き合って服薬指導をするのが仕事になっています。ドラマでは、大げさな表現もありますが、患者に真摯に向き合って裏方として最善を尽くしているところは、評価できると思います。薬剤師として見ると細かい薬のチェックや間違いに気がつくところは、実際の事例から監修しているのでしょう。見どころとして調剤室のセットなどは忠実に再現されていてお金をかけているなと思いました。
 また、NHKでも7月17日金曜日夜10時から、真野千晶役の貫地谷しほり主演で『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』が始まりました。こちらは、クレーマー患者たちに悩む女性医師の奮闘がテーマになっています。
いずれにしても新型コロナウイルス感染症への対応で医療従事者は命がけで仕事に取り組んでくださっていて感謝の気持ちで一杯です。
 そんな時、三浦春馬さん(30歳)が自殺しました。私は映画「永遠のゼロ」百田尚樹原作を見に行きました。三浦さんは、岡田准一さん演じる零戦パイロット宮部の孫で、司法試験に落ち続け人生の目標を失いかけた青年・佐伯健太郎の役でした。これから俳優だけでなくいろんな分野で活躍するであろうと期待していました。
またSNSなどで多くの誹謗中傷を受けていたとみられているプロレスラーの木村花さん(22歳)も自らの命を絶ちました。私としては、自殺をする人をなくしたいと言ってきましたので原因が何であれ残念で仕方ありません。
 そんな時、筋萎縮性側索硬化症(ALS)当事者の依頼で薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人容疑で医師二人が逮捕されました。ALSは、体を動かす運動神経が老化し、徐々に動かなくなっていく難病です。
昨年、ALS患者の船後靖彦氏(62歳)が参議院議員に当選されました。船越氏は「『死ぬ権利』よりも、『生きる権利』を守る社会にしていくことが、何よりも大切です。どんなに障害が重くても、重篤な病でも、自らの人生を生きたいと思える社会をつくることが、ALSの国会議員としての私の使命と確信しています」と述べました。
また、私とFacebookでつながっている医師であり、ALS患者でもある立場から難病患者支援に取り組むNPO法人「Smile and Hope」)の理事長の太田守武さん(49歳)は、「重度障害者でも自宅で安心して暮らせ、寝たきりではなく自由に外出したり旅行もしたりできることをもっと啓蒙し、安楽死を考える必要のない社会の礎を築かねば、と改めて胸に刻みました」とコメントしました。
私の名刺を作成していただいた佐藤仙務さん(29歳)は脊髄性筋萎縮症(SMA)で眼球や口と左手の親指1センチ程度しか動かせないけれど「寝たきり社長」と称し株式会社仙拓を経営しています。
私は当事者ではないのでどれほどの苦痛、辛さがあるかをはかり知ることができませんが、一生懸命生きている人もいるので励まされています。
安楽死については賛否両論があります。昨年NHKで放映された、日本人女性がスイスで安楽死を遂げる番組が大反響を呼びました。日本で安楽死は認められていません。安楽死は、死期は近くないのに本人の希望で元気なうちに殺してもらうことで自殺ではなく実行した第3者は殺人になります。
尊厳死という言葉もあり、末期がん患者など治癒の見込みのない人が、クオリティ・オブ・ライフ(QOL) と尊厳を保ちつつ最期の時を過ごすための医療です。
今回かけがえのないたった一つの命の尊厳についていろいろ考えさせられました。答えはありませんが皆が真剣に考え、自分のこととして考えるきっかけになったような気がします。
参照:ウィキペディア・NHK,フジテレビHP