日本の底力 ~「新しい日常」に知恵を絞って~  
総合学習センター柳岡塾 塾長 柳岡克子
 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が解除されました。しかし感染は終息したわけではなく、政府の専門家会議は具体的な実践例で「新しい生活様式」の必要性を呼び掛け、ソーシャルディスタンスを守りマスクの着用、手洗いの実践をし、密集・密接・密閉を避け体温測定や健康チェックをするように示しています。安倍晋三首相は「新しい日常」をつくると述べました。
 緊急事態宣言については、憲法に記載がないので、違反しても罰則などなく、知事に権限がある休業要請もあくまでも「お願い」なのです。その「お願い」に対して、日本国民は、本当に皆がんばって自粛しました。
 外出の多かった私も毎年早い時期から準備していた障害者の文化祭や福祉大会、スポーツ大会など2月に入って3月からのイベントがことごとく中止になりました。4月からは、各種団体の役員会や総会が延期や中止になりました。場所や日程の変更の連絡に明け暮れていたら、緊急事態宣言が出てステイホームに入りました。自粛期間は、テレビだけでなくインターネットのYoutubeで料理や健康の動画を観たり、Facebookで交流したり、zoomで研修などしました。忙しくて読めなかった本や登録しているメルマガを読んだり、部屋の掃除や衣替えをしました。
5月は、ゴールデンウイークにもかかわらず、高速道路も電車も空いていて、繁華街もガラガラでした。特に観光業界や飲食店は、休業しても家賃や給料などの固定費を払わなければならないのに売り上げが減り死活問題になっています。
 少しずつ国の特別定額給付金や雇用調整助成金や自治体の支援も始まっていますが、ありがたいけど遅いとか焼け石に水だという声もあります。規模の大小にかかわらず、業務縮小や閉店、廃業に追い込まれ、勤務時間の短縮や雇止め、内定取り消し、失業など国民の生活に大きな影響を及ぼしています。
 そんな中、知恵を絞ってアイデアを出し合い、皆で助け合う国民性が「新しい日常」を作りつつあります。飲食店側もテイクアウトやクーポン券のクラウドファンディングや出前など思考を凝らし生き残りをかけて必死です。オンラインを活用したネット会議で自宅にいながら、複数で顔を出しながら意見交換ができるシステムもできました。これなら今だけでなく移動が困難な障害者の会議などで活用できそうです。zoomを使ったオンライン飲み会も今回初めてやりましたが、今まで席を移動しにくくて遠くの席に座った方と話ができませんでしたが、画面上なのでチャットや音声をオンにすることで話せました。居酒屋で隣のグループがやかましいということもなく、静かな自宅で酔っ払ってもすぐに寝られるのがいいなと思いました。車なのでお酒を飲めないなんてことがなくなりました。
 サラリーマンもテレワークで自宅にいながらパソコンを使って仕事ができるのもあります。慣れてきたら人ごみの中に埋もれて通勤するよりいいかもしれません。6月から学校が始まりましたが、教育現場も大きく変わろうとしています。学校もネット配信で授業ができるように先生方は悪戦苦闘で教材を作成したり、オンラインで子どもたちとやり取りできるようになってきました。家族と話す時間が増え、一緒に課題をしたり、絆が強くなった人も多いでしょう。授業の遅れを取り戻すには、夏休みを返上するとか、9月入学に制度を変えるなどの意見も出ています。グローバル化に対応して9月入学を推進する人や入社や資格試験の日程や学校行事の変更など急な改革に否定的な意見があり議論は紛糾しています。学習塾もクラスターが発生したところもあり、これからはネット配信で授業をするところが増えるでしょう。私も資格試験の受験塾として書画カメラをzoomと連動して、パワーポイントを作成するのではなくテキストをダイレクトに写すようにしました。学校などで行っている講演もオンラインでできるように動画を作成しています。こんな時だからこそ皆に元気になっていただきいつでもどこからでも見れるようにしています。
 このように今までの生活が大きく変わり、「新しい日常」が定着していくでしょうが、テレワークにできない医療現場では見えない敵と戦う恐怖の中、医療従事者の皆さんの精神的・肉体的負担を思うと感謝で一杯です。日本には今まで戦争や災害を乗り越えてきた底力がありますから、あたりまえだと思っていたことにも改めて感謝し、皆で支え合いきっと元気な日本を取り戻せるときが来るでしょう。そしてコロナウイルスに打ち勝った証としてオリンピックの開催を喜びましょう。