身体障害者が議員になること ~参議院議員選挙が終わって~  
自由民主党和歌山県連青年部 柳岡克子
 7月21日に投開票で第25回参議院議員選挙が行われました。比例では、れいわ新選組から立候補したALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の舩後靖彦氏と、脳性まひの木村英子氏が当選しました。二人は、寝起きから、食事、排せつ、入浴、外出といったあらゆる日常生活において24時間の介助が必要です。船後氏の4,165票、木村氏の5,211票には同情票もあるかもしれませんが、障害者当事者の声を届けてほしいという願いもあるのだと思いました。
 平成30年7月に公職選挙法が改正され、一票の格差解消のため合区を導入しましたが差し引き6人増えることになり今年の参議院選挙から適用されました。参院は3年ごとの選挙で半数を改選するため、埼玉選挙区で1人増え74人、比例区で2人増え50人計124人となり、前回より3人増えることになりました。人口の少ない鳥取県と島根県、徳島県と高知県をそれぞれ1選挙区にする合区としたために、候補者を出せない徳島県から三木亨氏。島根県から三浦靖氏が得票数に関係なく自民党の候補者として「特定枠」で当選しました。優先順位を政党が決めることができるのです。
 この制度を利用して、れいわ新選組が重度の身体障害者2人を比例名簿の上位に掲載しました。特定枠に記される候補者は、個人としての選挙運動が制限されます。選挙事務所を持ち使用すること、選挙運動自動車・拡声器を使用すること、通常はがき・ビラ・ポスター・パンフレットを頒布すること、街頭演説、連呼行為、個人演説会もできません。特定枠が出来た背景はともかくとして、障害が重くて選挙運動をやりたくてもできない障害者にとってはちょうどいいシステムです。
 平成28年4月からスタートした障害者差別解消法によると障害のある人に「合理的配慮」の提供が求められています。今回この法律を作った国会議事堂がバリアフリーではないことが浮き彫りになりました。それは、今まで重度の障害者が当事者にいなかったからです。法律ができた時点で受け入れ態勢を整えなければならないという事に誰も配慮ができなかったのです。後手後手ではありますがお二人が議員になったことで、参院本会議場が改修されるなどバリアフリー化が進みました。
 国会では、昭和52年の参議院選挙において自分で車いすを動かせる八代英太氏が初当選したことをきっかけに、スロープの整備などが始められ、車いす用のトイレなども設置されました。八代氏は、タレント時代の昭和48年、ステージから転落して脊髄を損傷し下半身が動かなくなり、車いす生活となりましたが国会議員として活動し郵政大臣も務めました。
 八代氏は「車いすの議員が誕生するなんて誰も予想はしない時代でした。バリアフリー化に向けて動き出したものの『税金を使うのは許せない』『障害を持つ人に何ができるんだ』などのバッシングを浴びました。バリアを指摘する人がいないと、バリアは解消してかない。バリアフリー法という法律も作り、全国的に波及効果が広がりました。障害者が働くなんて考えられなかったけれど障害者雇用制度もできました。お二人には周りがサポートしてあげれば、問題はないと思います」と期待のコメントを寄せています。
 第199臨時国会の二人の初登院にあたり、国会のバリアの解消をしました。物理的なバリアだけでなく、介助者が本会議場などに付き添い、本人に代わって投票することを認めたり、パソコンなどを本会議場に持ち込むことも認めました。また上着やネクタイの着用は求めないこととしました。しかし、議論となったのは、障害者総合支援法では介助費は1割負担で日常生活の介助を受けられるのですが、就労中は公的補助を受けられないという重度訪問介護のことでした。そこで木村氏は、政府に早急な見直しを求める質問主意書を参院に提出しました。それで当面、参議院が費用を負担して、議員活動中も介護サービスが受けられるようにすることを決めました。
 これに対して、橋下徹氏は「所得制限の視点が必要」とし、松井一郎大阪市長は「参院議員は年額2181万円に上る議員歳費から介助費を支払うべきだ。国会議員を特別扱いするのではなく公平に支援を受けられる制度にすべきだ」と主張しました。私は、今回は公費でも自己負担でもなく、れいわ新選組が負担するのがいいと思います。
れいわ新選組がかかげる政策が実現しそうにもないのにどうして2,280,764人の心に響いたのでしょうか?名目GDP(国内総生産)は約546兆円でアメリカ、中国に次ぐ世界第3位です。また、国内の景気判断を行う際の代表的な指標とされている厚生労働省が算出している有効求人倍率は1.63でバブル期のピークだった1.46を上回っています。また総務省の労働力調査による完全失業率は2.4と8年連続低下しています
 平成24年12月に始まった今回の景気拡大は、アベノミクス景気と言われ、いざなみ景気(平成14年2月~20年2月)の73か月を超え、戦後最長となりました。しかし景気の拡大が緩やか過ぎて実感できないのです。そこへ消費税の増税で財布が苦しくなってアベノミクスは失敗だというマスコミの情報操作により、聞こえのいい夢の実現に期待したのです。
 10月4日から始まった第200回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説において「障害や難病のある方々が、仕事でも地域でもその個性を発揮して、いきいきと活躍できる令和の時代を創り上げるため、国政の場で、共に力を合わせていきたい」と舩後氏の当選を祝福し一億総活躍社会の実現を訴えました。
 身体障害者が議員として働くのは、肉体的にも精神的にも負担が大きいことでしょう。お二人には困難を乗り越えて、国民の命と財産を守り、国益を考えた活動をしていただけることを願っています。