これからの地域包括ケアシステム  
薬剤師・社会福祉士 柳岡克子
 2月3日・4日、国立京都国際会館で開かれた近畿薬剤師合同学術大会2018に参加しました。近畿2府4県の病院薬剤師会と薬剤師会が「地域に活きる薬剤師~共に羽ばたこう!未来のステージへ~」をメインテーマとして、はじめて合同で学術大会を開催しました。
 3日は、「薬剤師の未来像と医療情報システム」のシンポジウムに参加しました。ロボット化や情報システムが進展したので「患者のための薬局ビジョン」が厚生労働省から発行され、対物業務から対人業務ヘシフトチェンジされています。このような環境の変化にどう対応したらいいのかを聞きました。ランチョンセミナーは、食事しながらだったのですが緩下剤のマグネシウムの話でした。
 午後のセミナーは、「地域包括ケアシステムにおいて医療・介護ニーズに応えるために薬剤師にもとめられること」というテーマで5人の話を聞きました。「地域包括ケアシステム」とは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が必要となった場合でも必要なサービスを受けながら住み慣れた地域で自立して過ごせることを目標にしています。それには、病院・施設・薬局が連携することが大切だという話でした。
 広くてスロープが多くて部屋がたくさんある会議場でしたが、病院薬剤師会4000名、薬剤師会2000名の参加者が集う開会式は素晴らしかったです。その後ワールドカフェ形式の会場で「進めよう!地域連携~お互いを知ることから~」をテーマにワークショップをしました。「入退院支援、医療機関間連携、医科歯科連携、病診薬連携、栄養指導、医療介護連携などの多職種連携」について4名ずつのグループで各テーブル白熱した議論が展開されました。地域の規模にもよりますが顔が見える関係がいいということで、日高地域で開催されているフレンズつながりの話をしたらうらやましがられました。
 和やかなムードの懇親会を経て、ホテルに泊まり、4日「住み慣れた地域で暮らす認知症の患者さんを支える」というテーマのシンポジウムに参加しました。そこで京都式オレンジプランの認知症の方本人の言葉で書かれた「10のアイメッセ―ジ」の発表がありました。支援する側とされる側の壁のない自立支援の必要性を感じました。イベントホールではポスター展示があり、ゆっくり説明を聞いていたら時間がなくなるほどでした。企業展示は年々器機が精密になっていて有能なロボットが登場していました。これからはコミュニケーション能力を高め、より患者に寄り添った支援ができる薬剤師がITとロボットの技術が進んでも必要になってくると思いました。
 17日・18日は、独立型社会福祉士養成研修で東京へ行ってきました。地域を基盤に、専門職として自らの裁量によって、契約に基づいてソーシャルワークを行うことを業とするための基礎研修でした。既存組織に属さない独立した立場で地域に根差した活動を展開する社会福祉士で2018年1月31日現在、独立型社会福祉士の名簿登録者は全国で422名でまだ少ないですが、成年後見など中立の立場で支援しています。全国から84名の参加者があり、6人ずつ14のグループに分かれ、独立したいと思ったきっかけや課題、取り組みたい活動について意見交換しました。地域生活が複雑化、多様化、深刻化していく中で制度の限界、既存の組織での支援の限界を感じ、より専門性を生かした支援のあり方を熱く語り合いました。それには、地域のネットワークを生かして多職種連携やコミュニケーションを取りながら利用者本位の支援のあり方を考えました。実際は組織に属し介護支援専門員(ケアマネジャー)として働いている社会福祉士が多い現状ですが、地域包括ケアシステムの構築に当たっては、社会福祉士が接着剤のような働きをして専門職をつなぎ連携していくのがふさわしいと思いました。子どもからお年寄りまで、障害を持っている方も犯罪歴のある方も、すべての人を支援していくノウハウを社会福祉士は提供できるのです。和歌山県からの参加者は私1人でしたが全国の都道府県から集まった社会福祉士と交流しながら、地域に根差して活動している様子を聞き、これからの地域包括ケアシステムに社会福祉士は重要な役割を果たすことになると思いました。