障害者差別解消法施行にあたって  
和歌山県身体障害者更生相談員 柳岡克子
 平成25年6月19日成立、平成28年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。この法律は、「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求めて障害のある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、共に生きる社会をつくることを目指しています。
 「不当な差別的取扱いの禁止」とは、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービスの提供を拒否することや、サービスの提供にあたって場所や時間帯などを制限すること、障害のない人にはつけない条件をつけることなどが禁止されます。具体例として・受付の対応を拒否する・本人を無視して介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかける・学校の受験や、入学を拒否する・障害者向け物件はないと言って対応しない・保護者や介助者が一緒にいないとお店にいれない。などです。
 障害のある人は、社会の中にあるバリアによって生活しづらい場合があります。「合理的配慮の提供」とは、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者に対して、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。重すぎる負担があるときでも、障害のある人に、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、話し合い、理解を得るよう努めることが大切です。
 たとえば、従業員が少ないお店で混雑しているときに、「車いすを押して店内を案内してほしい」と伝えられた場合に、話し合ったうえで、負担が重すぎない範囲で、別の方法をさがすなどが考えられます。その内容は、障害特性やそれぞれの場面・状況に応じて異なります。具体例として・障害のある人の障害特性に応じて、座席を決める・障害のある人から、「自分で書き込むのが難しいので代わりに書いてほしい」と伝えられたとき、代わりに書くことに問題がない書類の場合は、その人の意思を十分に確認しながら代わりに書く・ 意思を伝え合うために絵や写真のカードやタブレット端末などを使う・段差がある場合に、スロープなどを使って補助する。などです。
 「障害者」とは、身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人(発達障害のある人も含む。)その他の心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象で障害者手帳をもっている人のことだけではありません。(障害児も含まれます。)
 対象となる「事業者」とは、会社やお店など、同じサービスなどをくりかえし継続する意思をもって行う人たちです。ボランティア活動をするグループなども「事業者」に入ります。といっても行政機関は義務ですが、事業者に対しては、対応に努めることとして努力義務でいずれも罰則はありません。
 都道府県や市町村においては、障害者差別を解消するための取組を行うネットワークとして、地域の様々な関係機関などによる「障害者差別解消支援地域協議会」をつくることができることとされています。障害のある人もない人も共に暮らせる地域づくりの一歩として、この地域協議会をつくることが期待されます。(参照:内閣府広報用リーフレット)