9、なにくその精神
 また、やんちゃな不良に呼びつけられた。「柳岡、ちょっと来い」と。私は恐くて今度は本当に殴られるのではないかと思った。試験前だった。「試験どこ出るのか?」と聞かれほっとした半面、「これはちょっと外せないな」と思った。「試験に出そうなところを教えてくれ」と。やんちゃな連中もテストではいい点取りたい。しかし授業をまじめに受けてないから大事なところがわからない。そこで「ここのリアス式海岸という言葉、これは岩手県のギザギザの三陸海岸のことで和歌山県と似てるから、出そう」と。それが出た。それからというものやんちゃな連中にとれば私を敵にするよりも家庭教師ぐらいに思って、こき使ってやろうと思ったようだ。試験前になったら「どこ出る?やまかけして。これどんなにするの?」というぐらい不良に取り囲まれるようになった。ちょうど廊下を歩いていた先生が私の席のあたりで不良に取り囲まれている私がいじめられているのではないかと飛び込んできた。「何してるの、柳岡さん大丈夫か?」って言うので、「勉強してるで〜」って言うと、先生もびっくりして「そうか、そうか、良かった。」っと。不良とも仲良くなることができ、私の中ではその時、勉強だけはがんばったらあの連中に勝てるかもしれないと思った。負けることばっかりだったがいつか見返してやろうっていう心を持ってしまった。まちがったことを教えたら殴られるかもしれないという不安もあったが、今思えば「なにくその精神」が勉強に駆り立てた。それでいっぱい勉強した。