近畿薬剤師学術大会に参加して
薬剤師 柳岡克子
 11月15日16日と和歌山県民文化会館とアバローム紀の国において「一意薬心〜国民のための薬剤師をめざし原点を見直そう〜」というテーマで第17回近畿薬剤師学術大会が開かれました。高野山で開かれて以来8年ぶりの和歌山県での開催に1000名を超える参加者があり、日高薬剤師会(上杉京子会長)からも27名参加しました。皆早くからから準備にかかりスタッフとして会場の設営など大会運営にあたられたようです。
 メイン会場となった県民文化会館大ホールでは、開会式が行われ、日本薬剤師会の山本信夫会長などの御来賓出席のもと稲葉眞也和歌山県薬剤師会会長は「近年の薬剤師を取り巻く環境の変化に対応し、優れた学術の向上を目指し、より良質な医療の提供や地域に貢献できる薬剤師となり、これからの薬剤師の方向性のヒントを見つけて欲しい」と挨拶しました。
 その後、関西大学社会安全研究センター長の河田恵昭氏の「やがて来る自身災害とその対策」という特別講演がありました。私はこの講演で「備えと訓練」の大切さを改めて感じました。県文の玄関には、全国で3台目の災害時に派遣されるという災害対応医薬品供給車両「モバイルファーマシー」が展示されていて中を見学する事が出来ました。調剤ができ、トイレ・シャワー・ベッドも完備され県から要請があれば、薬の補給などのための後方の車と2台連ねて災害地へ出動されるそうです。DMATとともに和歌山県として大きな役割を果たすことになるでしょう。災害がないのに越したことはありませんが。
 夜は、アバローム紀の国でマグロの解体ショーがあるなど和やかなムードで懇親会が開かれ、研修の疲れをいやしつつ他府県の方々と交流しました。
 2日目は、7つのテーマに分かれた分科会があり、講演や口頭発表、シンポジウムがあり各自が好きなテーマの会場を選択できるようになっていました。昼食時間もランチョンセミナーといってお弁当を食べながらの研修でした。各グループの研究発表の場となるポスター会場では、一人ひとりに丁寧に説明してもらえました。メーカーや卸の企業展示もあり薬剤師にとって役に立つ情報の提供や最新機器の展示がありました。
 どの発表も興味があり参加したかったのですが、同じ時間に開催される部屋には複数行けないので、口頭発表は、私も関わっているスポーツファーマシストの会場にしました。和歌山県薬剤師会の国体特別委員と薬事情報センターの発表でした。競技団体に専属スポーツファーマシストを配属しドーピング防止のためのアドバイスをするという全国で初めての取り組みに関心が寄せられていました。来年の紀の国わかやま国体に向けて活躍が期待されます。
 ランチョンセミナーは「飲みやすい薬の剤形」をテーマにした講演を選びました。呑みこみの基礎からわかりやすく説明してくれ、嚥下障害があるなどで呑み込みにくい場合はトロミを付けたりおかゆにまぜたり溶かしたり粉砕したり工夫が必要だという話でした。しかし錠剤には苦みを避けるためにコーティングしていたり、腸で溶けるように作っているものもありむやみに呑みにくいからといって粉砕してはいけないものもあります。それらを踏まえ薬剤師は介護の現場において服薬指導できるきめ細かい関わりが求められるとのことでした。
 シンポジウムは、4人の先生が「これからの薬剤師のあり方」について30分ずつ講演してくれました。地域に根差した薬局など大きな医療制度改革の中、信頼される薬剤師として今回の学術大会での研鑚は意義深いものでした。1月には、和歌山市で近畿病院薬剤師学術大会もあります。薬局と病院の連携についても語られることになるでしょう。2月には、介護支援専門員の全国大会と近畿大会が同日に田辺市で行われ、介護の分野においても薬剤師が活躍できるよう期待されています。年度の終わりにこのような素晴らしい大会が和歌山県で開かれることを誇りに思い、開催にあたり御尽力されたスタッフの皆様に感謝申し上げます。