「リケジョ」の勉強  〜社会福祉士に合格して〜
社会福祉士 柳岡克子
 私は、障害を持って産まれましたが、養護学校(支援学校)が近くになかったので、御坊幼稚園から御坊小中学校、日高高校を健常児と一緒に卒業しました。大学は薬学部ということで「リケジョ」でした。障害者の友達もいませんでした。30歳手前で障害者卓球と出会ったことではじめて障害者の友達ができました。御坊市身体障害者福祉協会の役員となって身体障害者障害者相談員になりました。しかし、福祉制度について深く勉強したことがなく、受けた質問に付け焼刃で勉強し、全体の流れもわからないまま答えていました。
 そこで、基礎から福祉のことをしっかり勉強したいと思いました。しかし、今から遠くの大学に通うわけにもいきません。そんな時、専門学校の通信教育を卒業すれば社会福祉士の受験資格が与えられることがわかりました。通信教育といってもスクーリングがあるので遠い学校では大変です。そこで広川町の社会福祉専門学校で社会福祉士科が開設されるのを待って入学しました。1年7カ月の通信のレポートを作成するのに分厚い20冊のテキストを熟読し、35本のレポートを仕上げました。2年間にわたり10日間のスクーリングにも出席しました。そこでは失業後新たな道を模索している同年代の人やケアマネジャーとしてのスキルアップを考えている友達ができました。
 一番大変だったのが、理系「リケジョ」で福祉系の大学を卒業しているわけではないので単位が認められず、実務経験がないので実習に行かなければならなかったことです。指導者研修を受けている社会福祉士がいる施設を探さなければなりません。幸い近くの特別養護老人ホームで実習させてもらうことができました。はじめは、利用者さんの話し相手として傾聴の姿勢や観察方法などを学びました。介護保険の認定調査に立ち合わせてもらったり、入所におけるインテークからアセスメントやプランニングもしました。毎日レポートを作成し、モニタリングでは反省点を書きだし、スーパーバイザーの指導を受けました。普通は1カ月で修了できるところ忙しいスケジュールの合間での実習だったので半年かかりました。そして専門学校で修了証書をもらい国家試験の受験勉強を始めました。
 試験では、「人体の構造と機能及び疾病」「心理学」「社会理論と社会システム」「現代社会と福祉」「地域福祉」「福祉行財政と福祉計画」「社会保障」「障害者に対する支援」「生活保護制度」「保健医療サービス」「権利擁護と成年後見制度」「社会調査」「相談援助の基盤と専門職」「相談援助の理論と方法」「福祉サービス」「介護保険制度」「児童・家庭福祉制度」「就労支援サービス」「更生保護制度」の19科目中0点の科目がなく150問中6割以上の得点で合格となります。平成26年度は27.5%の合格率でした。
 平成26年5月現在、全国で177,324人、和歌山県では1,133人が社会福祉士として厚生労働大臣に登録していて、そのうち県下270人が公益社団法人日本社会福祉士会に入会しています。
 近年、社会環境の変化に伴い、地域住民への社会的援助ニーズが増加・多様化し、問題解決は複雑で困難なものになっています。相談援助の国家資格である「社会福祉士」は名称独占で業務独占ではありませんが地域包括支援センターに配置されなければならなくなりました。高齢者・障害者・児童施設はもちろん社会福祉協議会や地方自治体、病院や刑務所など職域は増えています。例えば、病院や施設の入退院と在宅生活への移行支援。児童や高齢者や障害者への虐待への対応。自殺や孤独死、生活困難者や若年失業者への支援。弁護士会と連携した成年後見制度や累犯障害者への刑務所での支援。スクールカウンセラーとして学校や児童相談所での非行や不登校の支援など相談業務は広がっています。このように一人ひとりの相談に応じ、社会資源をつなぐ重要な役割としてコミュニティーソーシャルワーカーが主役のテレビドラマもできるなど社会福祉士が注目されています。
社会のニーズの高まりとともに研修も欠かせません。先日基礎研修Tを受講してきました。  3年かけて基礎過程を修了し2年かけて専門課程を修了すると認定社会福祉士となります。合格はスタートラインとしてこれからは専門職として職能を発揮するため、今年発足した日高御坊地域医療福祉情報ネットワーク(フレンズつながり)などの研修会にも参加し、情報交換や勉強会の機会を活かして自己研鑚に努めます。今までの経験を活かして、障害者として良きピアカウンセラーとなり、学習塾の経営者として子育て支援をしながら、薬剤師やケアマネジャーとして医療関係者とのつながりを深め、住みやすい社会になるよう少しでも貢献できればと思っています。