要約筆記って知ってますか?
要約筆記ボランティア 柳岡克子
 耳が不自由な人のコミュニケーション手段といえば手話を思い浮かべる人がほとんどです。生まれつき聴覚に障害があったり、幼少期に失聴すると、ろう学校などで、手話で友達と会話したり、口話などを学習して自然に身についていきます。ところが、もともと聞こえたのに、病気や事故などで人生の途中で聞こえなくなった人にとっては手話を学習するのは難しく、時間がかかり大変です。最近、突発性難聴の患者が増えています。また、薬の副作用で聞こえにくくなる方もいらっしゃいます。このような、中途失聴者のコミュニケーション手段として、あまり知られていませんが、要約筆記があります。話の内容の要点を書いて伝える方法です。
講演会など大勢の場所では、スクリーンに映し出す方法もあります。
 私は、平成14年度の要約筆記奉仕員養成講座を受講しました。9月から毎週和歌山市内の聴覚障害者情報センターに通いました。聴覚障害の基礎から、日本語の特徴、略語や文字の大きさ、読みやすい行間、要約のしかたや実践的な書き方など全11回にわたり学習し、修了証をいただきました。その後有田や田辺に奉仕員が増えていきましたが、日高地域にはまだ講座の修了者が少なく組織として立ち上がることができていません。
 13日、日高地方で初めて紀の国わかやま国体に向けて、ボランティア募集のPRも兼ね「要約筆記一日講習会」が開かれました。3月に行われた「つながりを広める文化祭」の相談コーナーに要約筆記会の方々に参加していただいたり、新聞でも大きく取り上げてもらい予想をはるかに超えてペンが足らなくなる程多くの方にご参加いただきました。
 初めての方も多かったので、要約筆記について説明があり、地元の難聴者の体験発表がありました。米原一さんは、薬の副作用で中学の頃から聞こえにくくなったそうです。聞こえにくくなるにつれコミュニケーションが不自由になり、情報を得にくくなったそうです。見た目では難聴者であることがわかりにくく、普通にしゃべることができるので理解してもらいにくい。そんな時要約筆記を知り、社会参加が増えて、中途失聴・難聴者協会に入り、友人もでき、難聴者同士気楽に会話を楽しんでいるそうです。
 講演会など広い場所での要約筆記は、オーバー・ヘッド・プロジェクタ (OHP)を用いてロールと呼ばれる巻物状のOHPシートに、油性ペンで文字を書き、スクリーンに映し出します。要約筆記者は光源を注視するため専用の偏光グラスと滑りよくするため手袋を着用します。
1行に10〜12文字を約3pの大きさで楷書で書きます。要約筆記は同時通訳と同じで、話すスピードに遅れないよう「速く」書かなければなりません。1分間に話すのは300字ぐらい、書くのは60字ぐらいしか書けません。そこで要点をまとめる要約力が必要になります。また、要旨を正確につかみ「正しく」書くには、正しく聴いて文として表現する国語力が求められます。そして、速く書けたとしても読めなければ伝わりません。「読みやすく」書く技術も必要です。話の内容が間違って伝わることがあってはいけません。この3原則にそって書くには、話の要点を的確につかむためしっかり聴きとることが大切です。速く書くために「略号」や「略語」「略称」も使います。利用者が知っていることが前提です。
 パソコン要約筆記は、パーソナルコンピュータをプロジェクタに接続し、音声情報をパソコンに入力し、スクリーンに映し出します。入力スピードが120字/1分と多く、単語登録機能などで作業効率が向上し、手書き要約筆記に比べ情報提供量が多いのが特徴です。
 講習会では、福祉大会での司会者の日程の説明を、聴覚障害者に伝える実習をしました。テープから流れる言葉を文字にするのですが、ついて行くのが精いっぱいでした。二つ目は、町内会の旅行の行程を町内会長が説明する場面でした。場所や会費についてきちんと伝えることができるかどうか書いてみて、数字が一杯出てきて、後で見てそれが出発時間なのか、積立金なのか、旅費なのか、舌足らずで正確に伝えられていないように思いました。このようにかなりの訓練が必要で、障害者スポーツ大会で、ボランティアとして活躍できるまで多くの方に要約筆記を知っていただき、学習して技術を身につけていただきたいと思いました。