熊野古道で平和を祈る
  〜バリアフリーモニターに参加して〜
和歌山県身体障害者連盟理事 柳岡克子
 毎年、和歌山県身体障害者連盟の理事会の後、仁坂吉伸知事との懇談会が開かれます。その席で、熊野古道で全国障害者サミットをしようと提案があり、知事も賛同され実現したのが、10月30・31日行われた「全国障害者熊野古道交流会」です。コガノイベイホテルで行われた熊野古道フォーラムでは、「世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』〜癒しと蘇りの熊野古道〜」と題して、熊野語り部の会の坂本勲生会長の講演や熊野曼荼羅絵解きや創作落語「熊野詣」を聞きました。夜の部の交流会には仁坂知事も駆け付けて下さり、全国から参加された障害のある皆さんに「和歌山の魅力をご堪能下さい。」と挨拶。田辺市長や白浜町長の歓迎の言葉に続き、円月太鼓や小芝陽子歌謡ショーのアトラクションがあり、和やかなセレモニーとなりました。
 あくる日は、参加者約200名はリフト付きバス3台を含む6台のバスに分かれて熊野本宮大社を正式参拝しました。県庁の職員さんらは朝早くからベニヤ板で通路をつくって下さり、車いすでも砂利の境内を進みやすいように配慮して下さいました。正式参拝の後は発心門王子へ移動し、アスファルトで舗装された約1キロメートルの熊野古道ウォークを体験し、大自然を満喫しました。今回は、和歌山県が主催で障害者連盟が全国の障害者に呼びかけるという形で協力させてもらいました。障害があっても楽しめる熊野古道をPRし、和歌山の観光行政の一役を担えれば幸いです。
 このような取り組みが田辺市でもあり、11月15・16日には田辺市熊野ツーリズムビューローが和歌山県新しい公共の場づくりのためのモデル事業として「バリアフリー熊野古道&川湯温泉モニターツアー」を企画。私もモニターとして参加させてもらいました。こちらは家族や友人のグループに障害者や高齢者がいるという設定だったので集合の秋津野ガルデンまで自家用車で行き、すべての行程を列を連ねてついて行くということになりました。私も母を隣に紅葉を眺めながら運転しました。今回はモニターツアーということで、NPO法人WACわかやまのボランティアさんや看護師さんも同行する中、車いすを使っている4組8名の障害者が参加しました。まず熊野古道館を語り部さんの説明で見学し、滝尻王子を参拝しました。夜は、川湯温泉に宿泊し、旅の疲れをとりました。あくる日は、語り部さんの案内で水呑王子と発心門王子を参拝し、熊野古道弁当を食べました。季節のおかずにめはり寿司やいなり寿司、赤飯のおにぎりなど修験道の風情をかもしだしたおいしいお弁当でした。昼からは、熊野本宮大社を参拝しました。今回は、車いすの前輪にロープを付けて二人で引っ張ってもらい砂利道を進みました。世界遺産となると、舗装やスロープ、手すりなど取り付けにくくなりソフト面でのバリアフリーとなりました。最後に大斎原を見学し解散となりました。
 これらの企画には、NHK和歌山放送局が取材に入ってくれ、平成26年の熊野古道世界遺産登録10周年記念と平成27年のきのくにわかやま国体を前に和歌山に観光客を呼び込むため障害者でも十分楽しめるということをPRしてくれました。
 私も、熊野古道といえばでこぼこ道のウォーキングというイメージがあり車いすで散策できるなんて思っていませんでした。しかし、皆さま方のおかげで、癒しの山々を間近に眺めることができ、歴史を感じることが出来ました。今回モニターした内容をもとに観光施設や温泉宿泊施設等の段差解消などの整備をし、和歌山の良さを知ってもらい、多くの方に熊野古道を訪れていただきたいなと思いました。