5、体育の授業
 学校に行きたくない日があった。時間割に体育の授業がある日だ。私はさぼりたかった。しかし朝母に学校へ送ってもらう。行きたくなくても熱があっても連れて行かれた。体育の授業の日は「できないから」「危ないから」という理由でいつも見学だった。体を動かすことは好きでも、体力的に無理だった。私は風邪をひいていないのに見学は、いつも風邪ひきの子の横に座らされた。風邪を移されはしまいか不安になりながらじっとしているのが嫌だった。風邪ひきの子は年に1〜2回体育の授業を休むだけだけれども私は毎回感想文を書かされた。競技のルールはすべて覚えて毎回「○○ちゃんがんばっていた」ばかりになって飽きてしまった。毎回なので書くことがなくなり退屈でつまらなく思っていた。運動会の前は毎日体育の授業があって、暑いので教室で「ぼけっー」としていると、図書館の鍵を開けてくれた。それからというもの体育の時間は、図書館の棚の本をかたっぱしから読んだ。といっても物語より「なぜなに事典」や偉い人の伝記を好んで読んだ。そこで野口英世の伝記と出会った。小さい頃、やけどがもとで不自由な指となり、笑われながらも困難を乗り越えて、医学の道で黄熱病の研究をした偉大な人のことを知った。その後、目、耳、口に三重の障害をもちながら克服していったヘレンケラーの伝記を読み、世界にはすごくりっぱな人がいることを知り感激し、それらが励みとなった。