いじめに負けるな   〜強い子に育てよう〜
御坊市人権尊重のまちづくり審議会 柳岡克子
 このところ立て続きに講演があって原稿を書く間がありませんでした。そんな時大津市の中学校2年生の男子生徒が飛び降り自殺した問題がいじめによるとのことで、連日マスコミで報道されています。そもそも私が講演活動をするきっかけになったのは、自殺する人がいるのを憂い、なんとかしたいと思ったからでした。私の講演では、「相手の痛みを感じられるようになろう。」「相手の気持ちになって考えよう」と言っています。いじめをなくすことに力を入れていますが、それだけなら他の方の講演と同じです。でも「私を見てください。いろんなしんどいことを乗り越えてきた私ですが、今元気にしています。皆さんも自分の命も他人の命も大切にして決して自分からご先祖様からつながってきた命を途切れさせてしまうことのないように。生きていればきっと楽しいこともあるでしょう。」と言っています。そんな講演を10数年。あちこちで命の尊さを訴え続けています。しかし、毎年3万人もの方が自分で命を絶っているのが現状です。
 自殺する人の苦しみ、悩み、つらさははかりしれなく、遺族の方々の悲しみを思うと痛たまれません。今回は、自殺の原因に「いじめ」があったのではないかということで問題視されています。周りも認めるような「いじめ」があったにもかかわらず自殺に至ってしまったのは、とても残念で、食い止められなかったのか悔やまれます。去年の10月のことなのに今頃になっていろんなことが明るみになって、因果関係やら責任やら裁判やら傷害事件などといって関係機関が動き出しました。思春期ですから悩むこともあるでしょう。むかつくこともあるでしょう。そのうっぷんを他人に向けるのはよくないことです。昔は、止めに入る子は格好よかったのですが、最近は、次は自分がいじめられるのではないかと恐れて見て見ぬふりをする卑怯な子が増えました。また、インターネットでの書き込みなど陰湿で表に現れにくいいじめも出てきました。殴ったとしても喧嘩の程度を知りません。加害者と思われる子や家族の写真までインターネットで流れるのは、個人情報の保護が言われている時代に由々しきことです。パンダが死んで大騒ぎするなら今こそ、命はリセットできないことを幼い子に教えるいい機会です。
 テレビのコメンテーターが言わないなら、批判も覚悟で私が言いましょう。いじめはなくなりません。原因を見つけてもなくなりません。もし原因がわかっても自殺は減りません。自殺を減らす方法があるとしたら、強い子どもを育てることです。いじめられても「なにくそ!いつか見返してやる!」ぐらいの気持ちを持たせることが大切です。そして周りがその子の存在を大切にしているということを伝えることが重要です。皆からかけがえのない存在であると思われているということに本人が気付くと、簡単に死ねないと思います。近くにいる家族も「あなたが生まれてきてくれてよかった。」という気持ちを言い続けることが必要です。また学校は、道徳教育を充実させ、生徒一人一人の生きる力を育てるような教育に力を入れてほしいと思います。
 私は、障害があっても支援学校(旧養護学校)ではなく、普通の学校に通っていたので、つらいことは山ほどありました。一つ一つ数えていたら命がいくつあっても足りません。それでも今こうして元気に生きているのは死ななかったからです。普通学校に行かせてもらえたおかげで、悪戦苦闘、もまれながらも打たれ強くへこたれない人間になれた気がします。社会に出たら厳しい現実が待っているのですから、頑張ろうと思って生きてきたことがよかったのです。
 やんちゃな連中の多かった御坊中学校では、あちこちでいじめのような事件が多発していました。でも、今はどちらも立派な大人になっています。私は自転車に乗れないことが悲しくて死のうと思いました。でも18歳になって車の運転免許を取れることがわかったら「車の方が速いしそれまでの辛抱だ」と思いを変えることができたのです。体のことで悩んでも体が良くなるわけではないのだから、もう泣くのはやめようと思ったのです。五体満足の皆さんならいじめなんかに負けないで、これからの楽しい将来を夢見て強く生きていってほしいものです。