[絆」をこわす個人情報保護法
 御坊市身体障害者福祉協会会長 柳岡克子
 少し前の話ですが、お世話になった方が入院されていると聞き、ある病院へお見舞いに行きました。気になっていたのですが、遠くなのでなかなか時間を作れず日曜日にやっと行けました。受付で、「その方は、退院されました。」と言われ、ほっと胸をなでおろし帰ってきました。ところが、日曜日は休刊で月曜日に夕刊を見てびっくり!「会葬御礼」ではありませんか。最近では、お亡くなりになっても、「退院」と言うそうで、死亡かどうかは個人情報なので言えないそうです。病院にいないのだから退院には違いないけど不親切です。病院で亡くなったことを教えてくれていたらその日のお通夜にも月曜日のお葬式にも行けたのにと思うと腹立たしいやら、申し訳ないやらで、複雑な気持ちながらも、一日遅れでしんみりとお参りさせていただきました。 
 個人情報保護法というのができて、同窓会をするにも名簿が作れません。親に聞こうものならオレオレ詐欺に間違われて教えてもらえません。
 先日、京都で交通事故をおこした未成年の父親が被害者に「お参りをしたい。」と電話をかけたことで、やたら電話番号を教えた方が悪者のように報じられています。警察だったり、教職員だったり、本人の同意なく教えることは、確かにこの法律に違反しています。父親から「遺族らに謝罪に行きたいので連絡先を教えてほしい」「被害者に誠意を示したい。通夜と告別式の日時を教えてほしい」と懇願されたそうです。マスコミは、少年法をあげて、加害者の名前も顔も発表していません。にもかかわらず被害者については事細かに取材し、実名で報道しています。近いうちに遺族に死亡保険金が入ったら、うさんくさいやからが近付いてくるかもしれません。私は、こちらの方が心配です。父親を映せば未成年の加害者が特定されるのでできないそうです。加害者の父親は、いたたまれない気持ちをどうすればよかったのですか?謝って済む問題ではないというのは、誰でもわかります。しかし、この父親もある意味つらい気持ちでいっぱいでしょう。お参りすることも謝ることもできない社会って「絆」を大切にしていると言えるのでしょうか?個人情報を悪用する詐欺師などは絶対に許せません。悪いことをする人が増えたからこの法律ができたのですから、悪いことした人にだけ適用すればいいのに、「謝りたい。参りたい。」という誠意までも踏みにじられてしまう法律になってしまいました。
 先日、御坊市身体障害者福祉協会の総会がありました。そこで会長として話させてもらったことがあります。身体障害者の手帳保持者は変わらないのに会員は減っているのです。新しく手帳を持たれることになった方がわからないのでお誘いできないのです。私のように、肢体障害者ならお誘いしやすいのですが、この法律ができてからは、「誰に聞いた?」と聞かれるのでむやみにお誘いできません。障害者の手帳を持つことはそんなに恥ずかしいことですか?隠さなければいけないことなのでしょうか?行政は全く教えてくれませんから、こちらの情報をちらしを作って、回覧板の通信販売の表紙に貼らせてもらったり、自助努力を重ねてきました。震災など対策を考える上で絆を深め、情報交換していくためにも、どこにだれがどのような状態で生活しているか共有できる信頼関係が大切なのです。最近は、福祉が行き届いて会に入らなくても制度を利用できるようになりました。それは、発足時の先人達が一致団結して行政にお願いし、少しずつ前進していくよう働きかけてくれたおかげです。その恩恵を受け感謝しながら心のよりどころとして会を存続させ「絆」を分かち合いませんか?障害者になったことで悩んでいるよりも同じ障害者同志、旅行したり、講演聴いたり、スポーツしたり楽しく障害と付き合っていきましょう。会の説明などさせていただきます。ご連絡をお待ちしています。(090-8219-0198柳岡克子まで)