テレビショッピングの誘惑
御坊市消費者学習会 柳岡克子
 人が生きていくには物を消費します。誰もが消費者として生活に必要なものを購入するのです。物と物とを交換していた時代を経て、貨幣が生まれ、お金を媒介として価値の交換ができるようになりました。しかし、その価値以上のお金を支払うのは、納得いきません。御坊市消費者学習会では、悪徳商法にだまされないように「かしこい消費者」となり、消費生活に必要な知識や情報を得るために毎月様々なテーマで勉強会を開いています。今までの消費者は、商品をしっかり見つめ、手にとって、においをかぎ購入しました。ところが最近、ネットショッピングや通信販売、テレビショッピングのように目の前で見ることも、手に取ることも、においもわからないのに買ってしまうことがあります。パソコンやテレビから流れてくる情報を信じて購入し、自宅にいるだけで配達されることが魅力です。人間の心理を巧みに利用した言葉を使って購買に結び付けています。引っかける方が悪いのか、引っかかる方が悪いのか。今となれば笑ってしまう私のテレビショッピングのエピソードを並べてみました。

◆始めから提示されていたら普通の値段なのに、高めの値段が設定されていて、「半額」「○○割引き」と言われ、得した気持ちになった◆旅行券が当たったと言われても当たったのは1人分で友達誘ったらその人の分は自己負担◆プレゼントと喜んでもそれを使うのに何か付属のものを買わなければいけない(電池など)◆遠い所の食事券が当たっても行く費用は自己負担。かえって出費◆おまけが目当てで買ってしまう(カバン付きの雑誌等どちらがおまけかわからないぐらいおまけの方が高価)◆無料のサンプルが欲しくて申し込んだら、電話やダイレクトメールが頻繁に来るようになった◆「当選!あなただけ」と言われたが実は全員が当たっていた◆「今回限り」と言っていたのに1カ月ぐらいしたらまた売っていた◆「ここだけ」と言ったのに、よく似たものがホームセンターで売っていた◆皿からはみ出るぐらい盛りつけられていて「大きい」と思ったら、単に皿が小さかっただけ。アップで映ると皿の大きさが分かりにくい◆高齢で元気なタレントが、健康食品を「私も飲んでいます。」と感想を言い、隅っこに「個人差があります。」と書いている。これは薬じゃないものを「効いた」と言ったら薬事法違反になるから。本当に毎日飲んでいるのか確認できないし、そのタレントに良くても私に良いとは限らないのに、「元気」とか「いきいき」とかいう言葉に弱い◆元々きれいなタレントと同じぐらいきれいになれるわけがないのにこれを使えばきれいになれると思わせるような演出◆撮影会場で、「ほうー」といううなずく声を聞くと、「皆が感動する程いいものなんだ」とテレビに向かって「ほうー」と言っている◆繰り返し流れる魅力ばかり聞くと欠点を発見する意欲が失われる。何でも良い面と悪い面があるのに。「簡単」と言えば聞こえはいいが「ちゃち」ということ。すぐに壊れるリスクがある◆「今一番売れている」と言われると「そんなに、流行っているなら自分だけが取り残されないように」と手に入れたくなる◆「これも付ける、あれも付ける」といろいろ付いてきて家に届いた時何を買ったかわからなくなった◆「返品できる」と言われても実際返品するのは面倒くさくて気に入らなくても辛抱してしまう◆個数が多くて得した気になったら小さかったり、身が入っていなかった蟹◆スタイルのいいモデルの着こなしを見て自分も同じに見えると思うのは勘違い◆サイズが合わない服に何度悔しい思いをしたことか◆手ざわりもにおいもテレビではわからない。「つるつる」「いい香り」「おいしそう」と言われても?◆字が上手になる、英語がしゃべれる、資格が取れるという教材を買って満足するのではなく勉強しなければ上達しない◆実演販売でスパスパ切れる包丁さばきを見て、包丁が良ければ料理が上手になると思う錯覚◆掃除機を買ったら部屋がきれいになると思っていたら大間違い。掃除機は掃除をしなければきれいにならない道具だった◆健康器具も使わなければやせられない。邪魔なルームランナーがほこりをかぶっている◆「今から30分以内にお電話を」と言われるとメモを用意してしまう◆「0120〜」と快適な音楽をつい口ずさんでしまうフリーダイヤルの電話番号を聞きながら、気が付いたら電話を握りしめていた◆「2つなら送料無料」と言われて1つでいいのに2つも買ってしまった。

このように私は本当にこれが欲しかったのか?よく考えてみればそれほどでもないのに不思議な魅力に誘惑されて、宅急便が届いた頃には、楽しみ半分、後悔半分のテレビショッピングでした。他人事のように私を笑いますか?同じ思いをしたことがあると分かち合ってもらえますか?