障害者が普通に働ける環境とは
和歌山県肢体障害副部会長 柳岡克子
 9月28日、和歌山県身体障害者連盟の肢体障害者部会の研修として、和歌山市雑賀崎にあるウインナック株式会社を見学しました。この会社は、重度障害者を雇用するため和歌山県・和歌山市とアクロナイネン株式会社が共同出資して、平成6年に県下初の第3セクター方式により設立しました。「障害者多数雇用企業」ということで、88人の社員中、肢体、聴覚、知的、精神合わせて40人の障害者を雇用しています。そのうち29人が重度障害者です。仕事は、自動車部品等の金型設計・製造、鋳造、金属加工、模型プラグ組立、リサイクルトナー製造などです。また平成21年からは、就労継続支援(A型)事業所「ウインワークス」を運営しています。
 就労継続支援(A型)とは障害者自立支援法で定められた事業所で、指定を受けた事業所は障害者と雇用関係を結びます。障害者には、最低賃金(和歌山県は685円/時)を上回る賃金が保障されています。(月10万円ぐらいになります)また会社には、事業形態に応じた給付金が支払われます。給付金は、国が半分、都道府県と市町村が4分の1ずつ負担しています。従来「福祉工場」と呼ばれていた施設形態が体系移行したものなどがこれです。就労支援には、ほかに雇用関係を結ばないB型があります。B型は「訓練」「リハビリ」を主な目的とするもので、従来の「通所授産施設」等が体系移行した所が多くあります。最低賃金法などの適用外で、作業工賃を分配すれば良いことになっていますので、月1万円ぐらいの非常に低い賃金のところも少なくなく問題になっています。
 障害のある人も障害のない人と同様、自分の能力や適性に応じて就労したいという希望をもっています。企業全体で障害者の雇用を促進するため、国は、企業に対して、雇用する労働者数の1.8%に相当する障害者を雇用することを義務づけています。平成22年6月1日現在、全国平均実雇用率は1.68%で達成していませんが、和歌山県の実雇用率は1.92 %(前年は2.02 %)全国10位(前年は6位)で法定雇用率を上回っています。法定雇用率達成企業の割合は62.4 %(前年は59.6 %)でした。56 人以上規模の民間企業において雇用されている障害者の数は1,251.5人で、前年より1.26 %(16 人)減です。(雇用障害者数では重度障害者は2人としてカウントされます)平成22年7月から、週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者も0.5人、重度の短時間労働者は1人としてカウントされています。
 国は、常用労働者201人以上の未達成の企業から「障害者雇用納付金」を徴収し、障害者を多く雇用している企業に「障害者雇用調整金」や「障害者雇用報奨金」を支給しています。また、障害者等の就職が特に困難な労働者を継続して雇い入れた事業主には「特定求職者雇用開発助成金」として中小企業の場合で2年間に240万円が賃金相当額の一部として助成されます。
 ウインナック株式会社は、自動車関連の仕事が多いこともあり世界同時不況時には、半期で6,500万円の赤字となり経営が非常に苦しくなりました。緊急対策として給与・賞与のカットや非正規従業員の解雇、関連企業への出向、生産調整のため交替出勤などで対応しましたが、交替勤務では一人が数種類の仕事をすることが必要となり、適応が難しい社員はウインナックでする仕事がなくなりました。そこで雇用を確保するため、平成21年に「ウインワークス」という福祉サービス事業を行う子会社を設立しました。業務はウインナックの下請作業です。障害ある社員のうちウインナックで働き続ける自信がない者を希望によりウインワークスで再雇用しました。仕事の内容や労働条件は大きく変えず、能力を高めるための技術指導や生活支援を積極的に行いながら、一般企業への就労をも支援しています。また業務伝達におけるコミュニケーション支援として手話通訳を配置しています。会社は労務費の軽減により収支が改善しました。利用者も自分に合った働き方が出来るということで負担が軽減しました。また、一般社員の障害者への理解も深まり、双方にメリットがありました。ただ、子会社化したことにより、88人の社員がウインナック53人とウインワークス35人となりどちらも56人を下回ったので障害者雇用率の計算に含まれなくなり、和歌山県の雇用率が下がった一因ともなっています。
 11月には平成23年6月1日現在の雇用率が発表されますが、企業の大小にかかわらず、障害者への理解と柔軟な対応や努力によって、障害者雇用に積極的に取り組み、障害者が、日本の経済を支える戦力として、活躍できる環境が整えばいいなと思います。