コミュニケーション能力を高めよう 〜傾聴のすすめ〜
キャリアカウンセラー 柳岡克子
 今までコミュニケーションが上手な人というのは、しゃべり方が上手な人だと思っていました。マイクを向けたら的確に意見を述べられ、滑舌が良くて流暢に話せる人だと思っていました。しかし、一方的に話す講演会などではそれはいいのですが対面では、「聴き上手」な人がコミュニケーション能力にたけていることがわかりました。
 最近コミュニケーション能力を高める講座があちこちで開かれ、「アサーティブ」や「コーティング」などブームになっています。私は、せっかく勉強するなら資格を取りたいと思い、鞄本マンパワーのCDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)の通学コースに通いました。毎週土曜日の朝5時の電車に乗って大阪駅まで通い、梅田センタービルで9時から18時半まで人の話にしっかり耳を傾け、聴けるようになるためのスキルアップのトレーニングを受けました。講義を受けるだけでなくグループに分かれて実践的なワークショップや3人一組でCDA役、クライエント役、アドバイザー役になって相談業務のロールプレーをしました。3か月の講座終了後1次試験に1発合格しましたが、2次試験は実技で10分間のロールプレー面接でした。しゃべりすぎてしっかり聴けなかったり、的外れな質問をしたりで何度も落ちてやっと合格しました。日本キャリア開発協会(JCDA)認定のこの資格はキャリアカウンセラーともいい心理カウンセラーとは違って、健常者を対象に就業支援やキャリア開発を職務としています。
 人と人との会話では、つい思い込みや批判めいたことを言ってしまったり、勝手な判断でさえぎってしまったりすることがあります。相手の話に全く関心を持たなかったり、相手の話を聞きながら次の質問を考えたり、わかったと結論を急いだり、聞きたくないことは聞かないで他の話題にそらしたり、自分と違った意見を批判したり、自分の意見を披露したりすると、「ちゃんと聴いてもらえなかった」という気持ちになって話すのをやめてしまいます。コミュニケーションがうまくいかないと人間関係がぎくしゃくしてしまいます。
 初回面接はラポールといって信頼関係の構築です。相手との信頼関係を築くための支援スキルには、かかわり行動、かかわり技法があります。視線を合わせうなずく、声の調子や身振り手振りもポイントです。相手をしっかり観察し、励ましたり、言い換えたり、要約し感情や意味を反映します。イエス、ノーでしか答えられない質問は「クローズな質問」と言います。相手の心を広げ自由に話してもらう「オープンな質問」が効果的です。どんな?どうして?どのように?などです。質問は、こちらの好奇心で聞くのではなく、相手の話したいことに焦点を置き、話を掘り下げて、話しやすいように促すのがいいでしょう。
 話しているうちに沈黙になったということはありませんか?沈黙を恐れていると傾聴はできません。沈黙には意味があります。相手が自分の考えや気持ちを整理しているとき、混乱しているとき、退屈しているとき、答えられない質問だった時、相手の反応を待っている時、満足で充実感や喜びを味わっている時などがあります。沈黙に耐えきれずにこちらが話してしまうと、相手が語る機会を奪うことになるのです。沈黙の意味を落ち着いて観察し、分析しながら相手の心に寄り添うのがいいでしょう。
 メールで用件だけを伝えるようになって、コミュニケーションが苦手な人が増えました。このような傾聴のノウハウは家庭や職場で活かせると思います。しっかり「聴き上手」になってよりよい人間関係を構築しましょう。