障害者の年金制度の法改正で朗報
年金アドバイザー 柳岡克子
 平成23年4月1日より、国民年金法の改正で、障害基礎年金の子どもの加算について朗報があります。1級または2級の障害基礎年金の受給者には、18歳に達する日以後の年度末までまたは20歳未満で障害の子どもがある場合、2人目までは、年間227,000円。3人目からは75,600円加算されています。これは障害基礎年金の受給権を取得したときに子どもがいた場合でした。しかし、今回の改正で、生まれつきもしくは若いころ障害者となって、1級または2級の障害基礎年金をもらっていた人が、その後子どもができた場合にも適用することになりました。
 これと同様に、厚生年金保険法の改正で、障害厚生年金に加給されている65歳未満の配偶者についても、受給権が発生した時は独身でもその後結婚した場合、年間227,000円加給されることになりました。65歳に達したときはその翌月から配偶者の老齢基礎年金に振替加算として227,000円加算されます。生計を維持していることが支給の要件なので、申請が必要です。4月の初めに日本年金機構から案内が届きます。これらの法改正で全国では約7万人が対象となります。
 また、児童扶養手当は離婚や死別で一人親となった父母または養育者または両親の一方が国民年金または厚生年金保険法1級相当の障害者に支給されます。今までは障害基礎年金の子どもの加算があるときは児童扶養手当は支給されませんでしたが、今回の改正で児童扶養手当と障害基礎年金の子の加算のどちらか額の多い方が受給できることとなりました。所得制限があるのですが、具体的に1人目なら児童扶養手当は全額支給の場合、月額41,550円の12か月で498,600円となり、障害基礎年金の子の加算227,000円より多くなります。2人目は月額5,000円、3人目は月額3,000円なので障害基礎年金の子の加算の方が多くなります。
平成18年4月の改正では、障害基礎年金と老齢厚生年金を両方受給することができるようになりました。例えば改正前、障害基礎年金を受けながら会社員として厚生年金に加入していたようなケースでは、65歳になって老齢厚生年金を受けようとすると、今まで貰っていた障害基礎年金とどちらかを選択して受給しなければならないことになり、障害基礎年金を受け続ける選択をした場合は老齢厚生年金の権利を放棄せざるを得ませんでした。そうすると、折角会社員として厚生年金に加入し保険料を払ったことが無駄になってしまい、結果として働く意欲をそいでしまうという問題点がありました。障害を持ちながらも働き、それが年金に反映されるような仕組みができたことで、勤労意欲の向上につながる良い制度改正であるといえます。
障害者の雇用の面におきましては、平成22年7月に障害者雇用納付金制度が改正され、 平成23年4月申告が開始されます。事業主は、常時雇用している労働者数の法定雇用率1.8%以上(56人に1人)の障害者を雇用しなければなりません。雇用障害者数が法定雇用障害者数1.8%を下回っている場合は、申告とともに一人当たり月額40,000円(平成27年7月1日より50,000円)を独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構へ納付が必要です。法定雇用障害者数を超えている事業主には一人当たり月額27,000円の雇用調整助成金が支給されます。今まで、常時雇用している労働者数が300人を超える中小企業主を対象にしていましたが、平成22年7月1日からは、200人を超え300人以下の中小企業事業主も納付金の申告が必要となりました。平成27年4月1日からは、常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の中小企業事業主に納付金制度の適用が拡大されます。週20時間以上30時間未満の短時間労働者(0.5人としてカウントされる)も納付金の申告、障害者雇用調整金等の支給申請の対象になりました。また、200人以下で、支給要件として定められている数を超えて障害者を雇用している事業主には一人当たり月額21,000円の報奨金が支給されます。その他、在宅就業障害者等に仕事を発注した納付金申告事業主の申請に基づき、支払った業務の対価に応じた額を支給する在宅就業障害者特例調整金や報奨金が支給されます。その他、施設の整備や介助、通勤やの能力開発における訓練など様々な助成金制度も増えてきて、障害者が働きやすい環境が整ってきました。
法律が作られた当時、障害者に対する考え方の中に、「障害者になると結婚しない、子どもができない、働けない。」という偏見があったような気がします。今頃になって改正とは遅すぎると思いますが少しずつ理解され、普通に暮らしていけるようになってきたことは前進です。