子宮頸がんから子どもを守ろう
薬剤師 柳岡克子
 御坊市では、小学6年生の女子児童120人を対象に、全額公費負担による子宮頸がん予防ワクチン個別接種が始まります。ワクチンでがんが予防できるならば、素晴らしいことです。いち早く「御坊の子どもをがんから守りたい。」という御坊市の対応はすごいです。御坊市では、7月に1回目、8月に2回目、来年1月に3回目の接種を行なう予定です。しかし、ワクチン接種には1回で1万7500円、3回で5万2500円の費用がかかります。そこで公費でワクチン接種の費用の全額ないし一部を補助しようという運動が全国で起こっています。民主党と自民党のマニフェストでもこれを推奨しています。御坊市は、平成22年度一般会計当初予算案に630万円を計上しました。このワクチンに関し、すべて助成しようとしますと全国で約1,800億円以上かかります。どこの地方公共団体も財政難にもかかわらず、全国の多くの議会で賛成多数で公費助成が可決され、実施されています。
 ワクチン接種とは、病気の原因となる細菌やウイルスなどをあらかじめ接種しておき、病気を防ぐ方法です。ウイルスなどが体に入ってくるとそれを攻撃する物質(抗体)ができます。ワクチンを接種することで、ウイルスなどが体に侵入してきた時に反撃するために、あらかじめウイルスなどに対する抗体をつくらせておくことができます。
 子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染であることが明らかになっています。子宮頸がんの原因である発がん性HPVは、皮膚と皮膚(粘膜)の接触によって感染するウイルスで、多くの場合、性交渉によって感染すると考えられています。性交渉のない女性にはHPVはありません。発がん性HPVは、すべての女性の約80%が一生に一度は感染していると報告があるほどとてもありふれたウイルスです。子宮頸がん予防ワクチンは、発がん性HPVの中でも特に子宮頸がんの原因として最も多く報告されているHPV16型と18型の感染を防ぐワクチンで、海外ではすでに100カ国以上で使用されています。日本では英国の製薬会社グラクソ・スミスクライン株式会社から「サーバリックス(劇薬)」というワクチンを輸入し、平成21年10月16日に日本国内で製造販売承認を取得し、12月22日から一般の医療機関で接種することができるようになりました。
 子宮頸がん予防ワクチンは、肩に近い腕の筋肉に注射します。ワクチンを接種した後には、注射した部分が痛むことがあります。注射した部分の痛みや腫れは、体内でウイルス感染に対して防御する仕組みが働くために起こります。通常数日間程度で治ります。ワクチンの効果がどのくらい続くのか、追加接種が必要かどうかについては、まだはっきりとわかっていませんが半年の間に3回の接種が必要です。今のところ、ワクチンを3回きちんと接種した人では、最長で6.4年間は、HPVの感染を防ぐのに十分な量の抗体ができていることがわかっています。このワクチンを接種することでHPV 16型とHPV 18型の感染を防ぐことができますが、全ての発がん性HPVの感染を防ぐことができるわけではありません。そのため、ワクチンを接種しなかった場合と比べれば可能性はかなり低いものの、ワクチンを接種していても子宮頸がんにかかる可能性はあります。このワクチンは、すでに今感染しているHPVを排除したり、すでに起こっている子宮頸部の前がん病変やがん細胞を治す効果はありません。また、このワクチンではエイズやその他の性感染症は予防できません。だから乱れた性交渉を重ねると感染の確率が高まります。
 昨年パンデミックの大騒ぎをした新型インフルエンザは、毎年の季節性インフルエンザより軽いものであることが判明していながらも、危険だと日々マスコミで繰り返されました。そして、「ワクチンが足りない」「緊急に輸入しなければ」と日本は国家予算で大量に購入し、期限切れで廃棄となりました。ワクチンビジネスは、今後爆発的な成長を遂げると予測されています。世界で約4兆円の売り上げになるというワクチンが市場に流通する準備が製薬業界で進行中なのです。今後も新しい病気の予防ワクチンが市場に売り出されてくることでしょう。ワクチンは予防医療であるため、その対象は健常者すべてです。地球の人口全てと言っていいほどの莫大な潜在顧客がいるということです。
 国が製造販売の承認をしたのですから、安全性については信じるしかありません。C型肝炎や薬害エイズ問題などで、副作用や薬害の危険性が指摘されてきた経験があるので慎重に研究を重ねて接種を可能にしたのだと思います。しかし、最終的には、打つか打たないかは本人(保護者)の意思にゆだねられています。自己責任が問われます。費用を負担してくれるから打つという方が多いかもしれません。
 私が一番気になっているのは、ワクチン接種の前に子どもたちにどのように説明しているかということです。「このワクチンを接種すれば、誰と性交渉しても大丈夫」とまではいかなくても、年齢にそぐわない行きすぎた性教育がされたり、純潔教育をされるべき子どもたちの心を汚し、性道徳の乱れを助長するようなことは避けてほしいものです。不倫やフリーセックスなどの乱れた性交渉を薦めてはいけないのです。健やかな子どもの成長を祈る気持ちは皆一緒だと思います。様々な情報を精査して行動していただきたいと思います。
 参照:グラクソ・スミスクライン株式会社・THINKER・日本の子供の未来を守る会のホームページより