車椅子ツインバスケットボールを応援しよう
和歌山県身体障害者連盟肢体障害者部会 副部会長 柳岡克子
 今年も6月20日御坊市立体育館で頚椎に障害があるなどの四肢障害者が競技する車椅子ツインバスケットボール日高交流大会が開かれます。この大会は第4回となりますが日高地方では前身として、平成7年から下肢障害の方の車椅子バスケットボール大会が開催されていました。パラリンピックに出場する全日本の代表選手がこの御坊に試合に来てくれるスゴイ大会で、迫力ある試合を目の前で見ることができました。私はこの感動を多くの人に伝えたいとずっと思ってきました。私も卓球選手としてパラリンピックを目指して練習していたことがあり障害者のスポーツに関心を持っています。しかし健常者でもマイナーなスポーツは、事業仕分けで予算削減の危機なのに障害者スポーツを支えていくことの難しさを感じます。脊椎に損傷があると下半身に感覚がないので排便・排尿の処理が大変だったり、床ずれしやすいという問題が生じます。それに加え頚椎に損傷があると体温や血圧のコントロールも難しく、肺炎にかかりやすいというリスクもあります。それらを乗り越えてスポーツをする精神の強さには頭が下がります。また、運営に当たり実行委員会のボランティアの力も大きいと思います。
 この大会を主管している障害者ピアサポートセンターの上道廣己代表は日高脊椎損傷者協会の会長でもあり自ら頚椎の障害者にもかかわらず、頚椎や脊椎に障害をおった方々へ希望の光としてサポート活動をされています。センターは平成16年に旧川辺町の支援を受けて南山スポーツ公園に事務所を置き発足しました。脊椎損傷者が自立、社会復帰できるように一人ひとりの状態やニーズにあったピアカウンセリング活動を中心に日常生活や住宅改修などの情報提供、車椅子や自助具の修理や販売などを行なっています。現在1級の障害者4名が運営しています。先月23日研修会があり、社団法人である全国脊椎損傷者連合会や和歌山県脊椎損傷者協会の会議や研修会への交通費やコピー機レンタル料やパソコンのインク代等、収入以上に出費がかさみ、センターの運営が厳しく支援を求めているとのことでした。ピアカウンセリングは、同じ障害を持った者同志でないと分かち合えない悩みを相談することで意義は大きいのです。いきなり障害者になられ精神的にどん底に落ち込んでしまった人がセンターを利用し、相談していく中で、今まで多くの方が自立し社会に出て行っています。ですから何としてもセンターを存続させるために多くの皆さんの力が必要となります。
 そこでいくつか提案したいことがあります。事務職を退職された方などにスタッフとして協力してもらい、社会福祉法人かNPO法人にしたり、共同作業所として登録するなど公的な団体になるのがいいと思います。行政の委託事業を落札するにはたくさんの書類を作成しなければなりませんが企画・運営費をいただけたら助かります。私が会長をしている団体ではいろいろ応募し、不採用の確率の方が高いのですが常にインターネットを見たり、NPOサポートセンターから送られてくるメールをチェックしています。また、せっかくスゴイ選手が試合に来られる歴史のある大会なのですから大会の入場料をいただいたり、募金箱を設置したり、テレビ和歌山の「@あっと!テレわか!」などで大きく宣伝してもらったり、旅行会社とタイアップして観戦ツアーを企画して全国からこの大会を応援に来てもらうようなこともいいのではないでしょうか。とにかく収益を上げる事業を健常者の力を借りながら進めていくことが財政難を乗り切るポイントになるでしょう。
車椅子バスケットボール大会に話を戻しますが、今まで観戦しながらもったいないと思うのは、選手関係者以外の観戦者がほとんどいないことです。もし地元の小中学生が授業の一環として観客席を一杯に埋めることができたら、教科書では学べない福祉の教育になるのではないでしょうか。毎年開会式で地域の首長や教育委員会の方々が来られていますが誰一人、「うちの管内の小中学生に観戦させたい。」と思わないのが不思議で残念でたまりません。日曜日に生徒を教室以外で授業をさせるとなると、クラブ活動と競合するとか、先生の休日出勤をどうするかとか難しい問題もありますが、「もし怪我でもしたら、先生の責任が問われるのでは。」と躊躇しているような気がします。何とかこれらの問題をクリアして子どもたちに観戦してもらいたいのですが、今は高校のバスケットボール部の生徒がボランティアとして参加しているだけです。毎年、感想文を読ませてもらいもっと多くの子どもたちに障害者の頑張っている姿を目の前で見てほしいと思います。支援はお金だけではないのです。障害者を理解し、障害者の立場に立って考えることは「百聞は一見にしかず」でこれからの時代を担う子どもたちにどれほど勇気と希望を与えるか知れません。
今の時代事故や病気で誰もがいつ障害者になるかも知れないのにひとごとです。自分とは関係がないことのようにとらえがちです。「障害者は大変ですね。」と同情してくれる方は多いですが、今自分に出来ることは何かないかというふうに考えられないのです。22年度の市民教養講座で児玉清氏は事故で頚椎損傷になった方が「人間すべて心次第。心があれば人間だ。」との回答で人生相談で活躍した方の話を例に上げ、「人の幸不幸は心の持ちようで決まる。」と話しくれました。また、2日の認知症予防講演会で早川一光氏は「『隣の人の悩みは自分の悩み』と思える人が増えるといい街になる。『ほっとけない』と思える心配りのある街づくりが孤独死をなくす。」と話していました。どうか助け合いの精神で今の自分にできることは何かを考えて行動に移してもらいたいです。それには6月20日の大会にはぜひ多く方に観戦していただきたいと思います。