長崎から平和を祈る
 〜第54回日本身体障害者福祉大会に参加して〜
和歌山県身体障害者連盟理事 柳岡克子
 5月21日22日長崎県で行われた第54回日本身体障害者福祉大会ながさき大会に和歌山県から28名が参加しました。インフルエンザで中止の心配もしましたが21日に福岡空港から大宰府天満宮を参拝し、佐賀県嬉野市に宿泊、22日は長崎県立総合体育館での大会でした。
 前日の観光にご一緒できず研修会に参加した、事務局長と前会長によると、弁護士の東俊裕氏の「障害者権利条約の批准に向けた課題について」という講演がありました。平成19年9月28日高村正彦外務大臣(当時)は、国連本部内において、障害者権利条約に署名しました。この条約は、平成18年12月、第61回国際連合総会において採択されたものであり、障害者の人権及び基本的自由の完全な実現を確保し、促進する上で重要な意義を有しています。昨年5月3日発効となりましたがわが国はまだ批准していません。東弁護士によると「現状では、同条約の履行をきちんと担保する国内法制が全く未整備であることから、まずは障害者基本法、司法へのアクセス、教育制度など国内法制の整備に道筋をつけることが先決である。」そうです。引き続き厚生労働省の蒲原基道氏の「障害者自立支援法の見直しについて」という講演で改正案を今国会に上程しているという説明がありました。まず、利用者がサービス利用料の原則1割を負担する「応益負担」の規定を削除し、家計の負担能力に応じた「応能負担」に変更しました。高額障害福祉サービス費について補装具と合算することで、利用者の負担を軽減。また、身体障害者について、グループホーム・ケアホームを利用できるようにし、利用者に対する住居費の助成も盛り込まれました。また、発達障害が障害者自立支援法の対象となることが明示され、利用者の心身の状態を判定する「障害程度区分」の名称を「障害支援区分」に変更し、定義についても「障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの」に改めました。相談支援の充実支給決定の前にサービス利用計画案を作成し、支給決定の参考とするよう見直しました。このほか、障害児支援を強化するため「放課後等デイサービス事業」を創設。また障害者の地域生活を支援するため、市町村に総合的な相談支援センターを設置し、重度の視覚障害者の移動支援についても、給付の対象となります。精神障害者の地域生活を支える精神科救急医療の整備等も盛り込まれています。

 22日は、長崎県立総合体育館に全国から約3000人の役員等が集まり、長崎県知事、長崎市長の歓迎の中、功労者への表彰式が滞りなく行われました。大会スローガンが読み上げられ、大会宣言が宣言され、大会決議が決議されました。
その後、昼食をはさんで長崎原爆資料館へ行きました。大学生の時、西明石から新幹線で広島に行き原爆ドームや資料館を見学し、放射能の影響や遺品の数々に感動したものです。昨年は、沖縄に行き、最前線の戦争を学びました。今回被爆地長崎に行けたことは本当によかったです。JR九州バスのガイドさんは帰りの空港までのバスの中で、自ら被爆しながら救護活動に尽くした故永井隆博士の著書「この子を残して」の一節を朗読してくれました。永井氏は島根県生まれ。長崎医大卒業後、放射線医学を専攻。昭和20年、原爆により重傷を負ったが、原爆症患者の治療に奔走しました。自身も白血病に倒れ、以後病床にあって執筆活動を続けました。バスの中ですすり泣く声が聞こえるほどの感動の一説を書きます。
    ・・・「この子を残して」 ・・・
うとうとしていたら、いつの間にあそびから帰ってきたのか、カヤノが冷たいほほを私のほほにくっつけて、しばらくしてから、「ああ、…………お父さんのにおい……、」と言った。この子を残して………この世をやがて去らなければならぬのか!母のにおいを忘れたゆえ、せめて父のにおいなりとも、と恋しがり、私の眠りを見定めてこっそり近寄るおさな心のいじらしさ。戦の火に母を奪われ、父の命はようやく取り止めたものの、それさえ間もなく失わねばならぬ運命をこの子は知っているのであろうか?(中略)せめて、この子がモンペつりのボタンをひとりではめることのできるようになるまで……。            永井隆著中央出版社より

 全国的にも9条の会は大盛況です。年々戦争体験者が減少していく中、実際の体験を語り継いでいくことの大切さを感じます。悲惨な体験を涙ながら話してくださる講師の先生の一言一言に手に汗握る感動を覚えます。戦争は絶対によくない。二度とあってはならないのです。今回長崎に行き改めて思いました。
 今のこの平和な日本があるのは自衛隊と日米安全保障条約のおかげだと思います。決して憲法が守ってくれたのではないのです。9条と平和を結びつけることに違和感があります。日夜日本を守ってくれている自衛隊に対してきちんと憲法に明記することが本来の姿だと思います。チェンジや改革を声高に叫ぶ方々が、時代にそぐわなくなってきた憲法のほころびを繕うとしないのは不思議です。でも、いろいろな考え方の方がいて、いろいろな会があって、それぞれ自由に意見を言えるのは平和だからこそで、この平和が長く続くことを願う気持ちは皆一緒だと思います。私は、右翼でも左翼でもなく仲良く皆の話に耳を傾け、日本の平和を祈りたいと思います。