1、入院生活
 私は、東京オリンピックの年、安珍清姫で有名な道城寺の近くの和歌山県御坊市で生まれた。
 長い間子どもに恵まれなかった父母にやっと生まれた姉は1か月で死んでしまい、一年後、授かった待望の赤ちゃんが私だった。ところが、仮死状態で生まれ、「あちこちに異常があり、脱臼もしていてとても治療が難しいので、大きな病院を紹介しましょう」と、お医者さんに言われ、和歌山市の病院へ入院することになった。そこで、「四肢関節拘縮症」と診断され、一生寝たきりの生活を覚悟させられたそうだ。生後一か月の赤ちゃんにもかかわらず私は、アキレス腱接合の手術に始まり、股関節脱臼の手術や、指にお腹の皮膚の移植をする等、何度となく手術を繰り返し、リハビリやマッサージの治療を続けた。そして、二歳半でやっと歩けるようになり、退院して御坊に帰ってこられた。入院中の家族の心配や苦労には、はかり知れないものがあったと思うが、私は幼なすぎて手術台の上でも恐怖も痛みも知らず笑っていたそうだ。