子どもたちに与えたい教科書とは
    〜新しい教育基本法の下に〜
新しい歴史教科書をつくる会和歌山県支部幹事 柳岡克子
高校入試の受験塾をやっておりますと、中学の三年間で学習するすべての教科書に目を通します。自分が生徒だった頃学習したテキストと比べて薄くなったと感じるのは、最近見直されてきた「ゆとり教育」のせいでもありますが、内容の記述に大きな変化が感じられます。それはどの科目にも見られますが特に歴史と公民の教科書の記載があまりにも自虐史観から書かれているよう思います。日本人が受けつぐべき文化と伝統を忘れ、日本人の誇りを失わせる書き方です。権利の主張の記述が多く、公共の福祉より個人を重視し、家族を崩壊させてしまう考え方が見られます。私は、21世紀に生きる日本の子どもたちが、日本人としての自信と責任を持ち、世界の平和と繁栄に献身できるようになる教科書で学んでもらいたいと思いました。世界のどの国も、それぞれ固有の歴史を持っているように、日本にもみずからの歴史があります。日本は古くから文明をはぐくみ、独自の伝統を育ててきました。私たちの父母、そして祖先の、たゆまぬ努力の上に安全で豊かな今日の日本があるのです。私たちの祖先の活躍に心踊らせ、失敗の歴史にも目を向け、その苦楽を追体験できる、新しい歴史教科書をつくり、歴史教育を根本的に立て直すために発足したのが「新しい歴史教科書をつくる会」です。
この会は平成8年12月2日、西尾幹二初代会長や藤岡信勝現会長らが都内のホテルで開いた記者会見をもって実質的にはじまりました。和歌山県支部は平成11年4月に野井晋氏を支部長として評論家の涛川栄太氏の講演を設立総会の講師として迎え発足しました。それから十年間お世話いただいた支部長が体調不良のため退任されました。後任には、和歌山県議会議員の尾崎太郎氏が就任され、1月14日、東急インで行なわれた緊急役員会には藤岡会長もはるばるお越しくださり永年の労をねぎらいました。
この会は、新しい歴史、公民教科書およびその他の教科書の作成を企画提案し、それらを児童生徒の手に渡すことを目的にしています。第一の目標は『新しい歴史教科書』および『新しい公民教科書』を刊行したことですでに達成しています。次の目標である教科書採択は新規参入の壁は厚く、なかなか難しい現状です。
採択までの流れを少しお話します。民間の教科書発行者が教科書を編集します。各発行者は、学習指導要領等をもとに作成し検定申請します。図書は、文部科学大臣の検定を経てはじめて、学校で教科書として使用される資格を与えられます。検定済教科書は、一科目について数種類存在するため、この中から学校で使用する一種類の教科書が採択されるのです。その権限は、公立学校で使用される教科書については、その学校を設置する市町村や都道府県の教育委員会にあります。また、私立学校で使用される教科書の決定の権限は校長にあります。市町村立の小中学校で使用される教科書の採択の権限は市町村教育委員会にありますが、複数の市町村にまたがる共同採択地区では、地区内の市町村が共同して科目ごとに同一の教科書を採択することになっています。適切な採択を確保するため、都道府県教育委員会は、学校の校長及び教員、採択関係者の調査研究のため、教科書センターで教科書展示会を行っています。6月19日から、日高地域では御坊小学校、美浜中央公民館、日高中央公民館、由良町役場2階和室、日高川町交流センター、印南町公民館、南部公民館でも7月8日まで展示されています。
平成18年12月15日、新しい教育基本法が、第165回臨時国会において成立し、12月22日に公布・施行されました。約60年ぶりの大改革です。新しい教育基本法では、これまで戦後教育で軽視されてきた愛国心・伝統文化の尊重・道徳心や公共心の尊重・家庭教育の重視・宗教的情操教育など、わが国が本来必要とされる教育理念が明文化されました。また、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、教育振興基本計画を定めることなどについて規定しました。それを受けて平成20年3月28日小中学校の「新学習指導要領」が告示され、教科書編集の基準や教師がどのような教科や活動を、どの学年で、どのように教えるべきか具体的に示されたのです。
教育基本法の改正に伴って、教科書を良くしたいと考える有識者が増え「教科書改善の会(屋山太郎代表世話人)」も発足しました。また、教科書だけでなく教育全般について提言していこうとする日本教育再生機構(八木秀次理事長)もできました。このように戦後レジームからの脱却といわれる教育改革が教育基本法の改正によりやっと動き出しました。今後は採択の権限のある方々の良識ある判断により、子どもたちの未来に希望のもてる教科書を与えてくださるよう願うばかりです。保護者の方々には実際お子様が使っている教科書をじっくり読まれたり、教科書センターへ足を運ばれ現在の検定済教科書を肌で感じていただきたいと思います。どのような教科書がふさわしいのか親も一緒になって考えてほしいと思います。