15、受験勉強
 3年生が近づいてきた。進路を決める時期だ。家族はこれから先の自立への道を模索した。私は理科と数学が得意だった。退屈な体育の時間のおかげで小学校の図書室の本を片っぱしから読んだ。中でも「なぜなに事典」をよく読んだので理科が好きだった。理科の先生になりたかった。子どもたちに身の回りの不思議を感じてもらい「なぜ・どうして?」と考える子どもを育てたいと思うからだ。それで理科の先生の免許のとれる大学ばかり探していた。いずれにしても大学に行きたいと考えるようになった。それで3年生のクラスはT型(理数系)を選んだ。今までとは違って勉強に付いていくのが精一杯だった。おまけに学校の勉強に加え受験勉強もしなければならない。受験勉強は夜遅くまで寝る間を惜しんでやった。でもうちの親は二人とも「勉強しなさい」とは言わなかった。だからよけいにやった。「こんな体だから行かせてもらえないかもしれない。でも受かったら行かせてくれるだろう。絶対に受かってやる」と。実際御坊から通える大学はない。父母にとっては大きな決断だったと思う。祖母や幼い弟がいて乙武君のように引越しなど出来ない。どこに合格しても家族と離れて生活をしなければならなかった。皆「一人でやっていけるか不安だったでしょう。」と聞いてくれる。私は受験勉強で頭一杯でそんなこと考える余裕がなかった。そんなこと悩んでいる暇があれば英単語の一つでも覚えたかった。