あなたならどうする?〜危機管理意識を養う〜
わかやま食の安全サポーター 柳岡克子
 
 和歌山県では、県民の食への関心を高め、食の安全や食生活の改善に関する知識等の普及を図るとともに、県民からの意見等を食の安全施策に反映させるため、「わかやま食の安全サポーター」を募集していました。そこで応募すると、食の安全確保に関する知識と理解を深めるための資料などが送られて最新情報を得ることが出来ます。
先日の研修会で「ゲーミングシミュレーションクロスロード」というワークショップを行いました。「クロスロード」とは、「重大な分かれ道」、「人生の岐路」のことで、ゲームの参加者が、与えられた立場に立って参加者間で意見を交換しながら、問題の解決策を考える手法です。「クロスロードゲーム」とは、カードを用いたゲーム形式による教育教材のことです。防災におけるリスクコミュニケーショントレーニングツールとして開発されたもので・神戸編(行政・市民)・感染症編・新型インフルエンザ編・食の安全編・エイズ編などがあります。今回は「食の安全編」を用いて、参加者が、食品に関する問題への対応を積極的に考え、他人の意見に耳を傾け、自分とは異なる意見・価値観に気づき、コミュニケーション能力を高めました。
ゲームは、様々な状況を設定された問題カードを使ってその問題に各自が「A」又は「B」で答え、その判断を多数決によって勝者を決定します。勝者はポイントとして「青い座布団」のカードをもらうことができ、その数を競うというものです。なお、少数意見も貴重であるという観点から、その意見が1人のみだった場合には、その人は「金の座布団」のカードがもらえます。しかし、判断に優劣をつけるのを目的としているのではなく、「自分の判断・意見」をしっかりと認識して持つことが大切です。
例えば「あなたは食肉加工品会社工場長です。」「月曜日の朝、冷凍庫トラブルで庫内温度が10度になっているとの報告を受けた。庫内の冷凍鶏肉のほとんどがまだ凍っているが、在庫量は多い。そういえば、最近鶏肉由来の食中毒の発生が多いと聞いた。あなたは、鶏肉の廃棄を指示する?しない?」Aは「指示する」Bは「指示しない」でどちらかのカードを一斉に出してもらいます。5人のグループでは3対2なら3人の意見の人に青い座布団です。4対1なら1の意見の人が金の座布団をもらえます。5対0ならだれもカードはもらえません。
私は、以前職場のアイスクリームが冷凍庫の故障で溶けてしまいました。その時社長の判断ですべて廃棄した経験があります。お客様第1の会社では当然の判断だと思います。同じ様に我が家も先日冷凍庫が故障しました。母はもったいないからと中に入れていた肉や魚を一つずつ臭いを嗅ぎ安全を確認した上で家族で食べました。同じようなことでも立場が変われば対応が異なります。
一通りの設問が終わればふりかえりシートに記入します。回答を出すのに迷ったり、意外な結果になった設問カードを1枚選びます。そこで、もし「この状況でこういうことが分かっていたら、または、状況がこう変わっていたら回答を変える」という事例を挙げてもらいます。
前例では「10度になってまだそれほど時間が経っていないことがわかれば。A→B」「食中毒の被害がかなり出ていることがわかれば。B→A」といった具合です。あとどのような情報が必要かあらかじめ考えておくことも危機管理には大切なことです。緊急事態には不安をかき立てる情報が錯綜するからです。
このゲームの目的は少ない情報から、重大な判断を迫られる体験をシミュレーションすることで、立場による意見の違いがあり、考え方は人それぞれであることを理解するのです。また自分の知らなかったことを気づき、他の人の意見や話しを聴き、自分の意見を相手にわかるように伝えたり、社会の問題点や仕組みを学ぶことです。
日本は島国ということで、危機管理に対する意識が低いように思います。しかし、最近では、テロや災害、事故や事件など危険なことはひとごとではなくなって、いつ自分の身に降りかかってきてもおかしくない状況です。自分はどうするかの判断を迫られた時、正しい情報をたくさん集め正しい選択ができるようなりたいものです。そして選択した結果に対しては自分で責任を持った対応をしなければならないと思います。