11、音楽との出会い
 そんな時、御坊中学校に吹奏楽部ができた。楽器が届いた日、音楽のF先生は「見においで」と声をかけてくれた。きれいな音色のフルートやピッコロを持たせてもらった。親指が届かない。クラリネットやサックスは小指が届かなかった。トランペットやトロンボーンは重くて長い時間支えられなかった。「先生、私にできる楽器ないわ。」と帰ろうとしたとき、ドラムにぶつかりそうになった。せっかく来たのに吹ける楽器がなくていらいらしていたので思い切りたたいた。その時、やけになって投げ捨てたバチを拾い上げて持ち方を教えてくれた。先生は「リズムに合わせてたたけばいい」と。私は「これや、これならできる」と、すぐに吹奏楽部の1期生として入部し練習に励んだ。クラブではクラス以外の新しい友達もできた。悔しいことがあったらドラムにぶつけてたたいた。ドラムをたたいていると気持ちがすっきりした。放課後自転車に乗れないから寄り道ができないと悲しんでいた自分がうそみたいだった。夕方吹奏楽部のクラブが終わる頃に母に迎えに来てもらうということで「放課後一緒に宿題しよう」と誘われても「練習あるから」と断れるようになっていた。初めての演奏会を無事終えたとき、死ななくてよかったと思った。
 音楽との出会いは、後ろ向きで苦しくて憂鬱な日々から解放され、私を明るく変えてくれた。思いを切り替えるなど、別の目標ができるたら「死にたい」と思っていたが、がんばろうという気持ちに変えることができた。そして泣いても解決しないことはもう泣かないと決めた。