少子化問題への提言
元まちづくり会議わいわいGOBO会長 柳岡克子
 人口の減少が止まらない和歌山県にとって少子化問題は深刻で、県民一人ひとりが将来の和歌山の姿をしっかり見据えた対策をとらなければならない時期に来ていると思います。
 この程日高川町で町内企業に勤める独身男性の出会いの場を提供するため、コンパを開催するというニュースを目にしました。以前まちづくり会議わいわいGOBOで後継者不足に悩む農家の独身男性と、市外から縁あって御坊の医療機関へ働きに来ている看護師さんたちとのカップリングパーティーを提案したことがありました。出会いが少子化問題への解決にすぐに発展し結びつくとは考えにくい要素もあります。しかし、出会いがきっかけでいいご縁となれば、市の人口減少を減らし、有能な看護師さんたちの流出をも食い止められるのではないかという企画だったのですが、行政が関与する次元ではないとのことで予算がつきませんでした。そういう意味で日高川町の取組には注目しています。
和歌山県は、地理的に南北に長く北部に県庁所在地がある点で大阪に隣接しているとはいえ、紀南地方は過疎化が進んでいます。その原因のひとつとして日高地域以南からは大学に1時間以内に通えない不便さあげられます。18歳で高校を卒業するとどうしても地元を離れなければならないのです。企業が少ないことも卒業後地元に戻ってきにくくしています。若い世代が県内に少なければ、地元での結婚、出産も減ります。子どもを産んで育てることの意義と感動を伝える教育を小さい頃からしていき、未来に夢をもてないネガティブキャンペーンの排除をしなければ、将来が不安で産めないというお母さんが多くなるのもしかたがないのが現実です。また、若い世代の収入減も家庭を持ちたがらない要素となっています。なかなか正規雇用されず、パートやアルバイト扱いの男性が結婚して所帯を持つだけの生活基盤がないのです。その反面、自由な時間を楽しみ結婚によって生活レベルを下げたくないという女性も増えています。このような晩婚化の傾向も出生率を下げている要因でしょう。
 統計では人口が減っているのに世帯数は増えています。それは核家族が増えているということです。しかし、和歌山県は他からの流入ではなくどちらかの親元のすぐ近くに新居を持つ家庭が多いので首都圏で増えている核家族とは違い、子育てもしやすいといえます。そこで出生率をあげるためには、産婦人科医の増員は不可欠です。安心して子どもを出産できる環境を整えるには、夜間でも診察可能な病院を増やし、対応してもらえるようにすることです。また、助産師の養成も不足する産婦人科医の助けになるでしょう。看護師資格者に助産師資格をとってもらえる学校の社会人枠を増やし、自宅出産など地域密着型の出産も見直すべきです。産婆さんと言う言葉も最近あまり聞かなくなりましたがちょっと前まではお産は助産院へ行きました。産婦人科医に対しては出産時における医療過誤などの裁判が多いことが問題になっていますが、仕事に専念できる環境と医大生の産婦人科離れを抑制することも考えなければなりません。
 出産後の育児に当たり就学前母親教室を開いたり、若いお母さんの子育てにおける悩み相談室の開設も必要でしょう。また、働くお母さんを支援するための土日保育は県下全域でモデル地区を設置し、取り組む必要があるでしょう。第2子、第3子を産みやすい環境にするには、仕事と家庭の両立(ワークライフバランス)を考え、夫婦が協力し合いながら子育てをするための制度改革も施策としてあげられます。その他、提言するとしたら地域で子育てを支えるため団塊の世代のマンパワーをいかした学童保育や放課後教室など見守りを充実させることがいいのではないでしょうか。少子化対策には、企業誘致による人口増加などハードな面と和歌山県独自のアイデアを駆使したソフトな面の両輪で進めていくことが望ましいと思います。